第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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ジャッキーさんの家で打ち上げをしてから二日。 僕は相変わらず会社に出社していた。 「次に入った依頼内容が、鬼すぎでなきゃエイミーだけで行ってみるか!」 すこぶる笑顔の社長にそう言われ、緊張しながら「はい!」と返事をしたのだが、そうタイミングよく僕に行けそうな依頼が来なかった。 昨日は一緒に出社だった水渦(みうず)さんはというと、一件入った依頼現場に僕を置いて一人で行ってしまった。 せっかく来た依頼。 なんで僕が行かなかったかというと、内容が鬼レベルだったからだ。 C県の外れ。 そこの廃屋で昼夜問わず、ゴリッゴリの悪霊が出るという。 依頼主は廃屋及び山の所有者。 去年から廃屋に面した急カーブの峠道で事故が多発している。 車でもバイクでもドライバーのみなさんは、白い服を着た髪の長い女の幽霊が、急に背後からしがみ付いたかと思ったら、ペロリと顔を舐めてきた、それに驚いてハンドル操作を誤ったと、すべて意見が一致しているのだ。 事故に遭った人達の中には、大怪我を負った方もいる。 あまりにも容赦がない、憑りつく幽霊は、襲った生者が死んでも構わないというつもりなのだろう。 その内容であれば、新人一人で行かすには少々心配であるという事と、それでも行くとしたとして、ペーパードライバーの僕では電車でC県までは行けても、現場である峠の中腹までの移動が難しい。 タクシーを使っても良いのだが、もしも幽霊が別の場所に移動した場合、そのたびタクシーを呼んでとなると効率が悪すぎる。 下手すりゃ、呼んだタクシーのドライバーさんが襲われるかもしれない。 そうなると、車の運転に慣れている水渦(みうず)さんが行くのが必然だ。 しかも対悪霊戦には持ってこいのスキルの持ち主なのだ。 「なんならミューズとツーマンセルで行くか?」 と社長が言ってくれたのだが、水渦(みうず)さんが首を縦に振らなかった。 「神奈川の現場でも一緒でしたから、しばらく一緒に行きたくないです」 えぇ……? なんで……? 神奈川の現場では、助けていただいたけど、なんとかやり切る事ができたし、ジャッキーさん()での打ち上げも楽しかったじゃないですか。 遊びと仕事は別だと言われたらそれまでだけど、水渦(みうず)さんとは結構仲良くなれたつもりでいた僕は、”しばらく一緒に行きたくない”と言われてショックだった。 でも……C県の現場は鬼レベルなのだ。 好意的に考えれば、新人の僕が一緒じゃ足手まといになるのだろう。 そうハッキリ言わずに濁してくれたと思えば……うん、優しさなのかもしれない。 だけどもし、前回現場が一緒だったという条件は同じでも、今回のパートナーがハイスキルのジャッキーさんだったらツーマンセルを組んだのだろうなぁ。
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