第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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弥生さんの変身っぷりに驚いたものの、メイクも髪も本当によく似合っていた。 「そんなに可愛くなっちゃったら、モテちゃいますよー?」 「そうかぁ?」 キャッキャウフフと二人で笑い、「今度エイミーちゃんにもしてあげる」と言われたが、それは丁重に断った。 だって僕、男だから若返らなくてもいいし、オッサンって結構楽だし。 「そういえばさ、こないだまた現場入りしたんだろう? 神奈川のポ現だって? スリーマンセルでジャッキーとクソ水渦(みうず)と三人でさ」 クソ水渦(みうず)って……思わず笑ってしまう。 ブレがない、本当に仲が悪いんだから。 「はい、行ってきました。それと社長に神奈川の現場を最後にOJTは終わりだって言われました。次に行く現場では独り立ちになります」 「わっ、オメデト! 大丈夫、心配しないで。最初は緊張するだろうけど、エイミーちゃんなら良い霊媒師になるよ。むしろクソ水渦(みうず)の方が心配だわ。あの愛想の無さがクレームになりそうだもん。ま、ムカつくけどスキルだけはあんだよね。で、どうだった? 二人と同行して勉強になった?」 僕より8つも年上なのに、5つは年下みたいな弥生さんが真面目な顔で聞いてきた。 「はい、すごく勉強になりました。水渦(みうず)さんには、ピンチの時に増幅の印で助けてもらったし、ジャッキーさんの助言とご指導で霊力(ちから)の応用も出来ました。なによりジャッキーさんの霊力(ちから)がすごかったです。勉強にもなったけど、それ以上に圧倒させられたというか……」 バラカスさんの第98霊力(パワー)サーバーにアクセスしてるとはいえ、転送された霊力(ちから)を無駄にする事なく、的確に使いこなしていた。 ジャッキーさんは「サーバーがなければ、ただのオジサンだよ」と謙遜していたが違う。 たとえば僕が、霊力(パワー)サーバーを使わせてもらえる事になったとして、ジャッキーさんのように使いこなせるかと言ったら自信がないもの。 「えぇ……! クソ水渦(みうず)が人を助けるとかマジ? 懐いてるのは先代とジャッキーだけだと思ってたわ。エイミーちゃん、それスゴイよ。でもま、良かったね。いいもの視れたじゃん。ジャッキーはさ、ウチの会社でも一番スキルがあるから、新人さんには良い手本になるんだよ。それに……ヤツは優しいからな、」 さっきまでの豪快な大声ではなく、静かにそう言った弥生さん。 うん、分かります。 ジャッキーさんは優しいですよね。 「現場でジャッキーさんからお菓子と夜食のカップ麺いただきました。ジャッキーさんは在宅だから、自分が食べる訳じゃないのに、僕らの為に用意してくれてたんですよねぇ……僕、男だけど、あやうく惚れるトコでした」 それだけじゃない、ホントは現場で水渦(みうず)さんと寝落ちした。 スヤッスヤに寝ちゃった僕らを怒るどころか、寝かせておいてくれたんだ。 マジ神、マジリスペクト。
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