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「惚れる? エイミーちゃんが? ヤツに? あはははははは! やっぱりアイツはモテるな! まぁ気持ちは分かるよ。ジャッキーといればいるほど、うっかりな、惚れちゃうんだよ」
バシィッと肩を叩かれ……って、けっこう痛いっす、姐さん。
「そうそう、このまえ水渦さんとジャッキーさん家にお邪魔したんですよ。”神奈川の現場おつかれさまでした”の打ち上げで。ジャッキーさんの手料理を頂いたんですが、これがめっちゃおいしいの!」
「なにぃぃぃぃ!! いいなぁ! なんでアタシも呼んでくれないのよ! つーか、クソ水渦が行くコトないじゃない!」
「や、でも、ホラ、水渦さんもスリーマンセルのメンバーだし」
「そーだけどさー! いいなぁ……アタシもジャッキーのゴハン食べたかった……」
急にメソメソしだした弥生さん。
そんなにゴハン食べたかったんだ……まぁ、おいしかったからねぇ。
なんなら同じメニュー僕が造りましょうか?
レシピ貰ったし、そう言うと、
「アリガト……」
力なくお礼を言ってくれたけど、やっぱりまだメソメソは継続中だ。
どうしたもんかと思案しつつ、ゴハン……ゴハン……と呟く弥生さんを見ていたら、分かっちゃったよ……きっとお腹がすいてるんだ。
よし、下の事務所に行って、机からお菓子を持って来よう。
「弥生さんの気持ちは分かりました。ちょっと待っててください。僕、すぐに行ってきますから!」
立ち上がり小走りでドアに向かう。
背中に聞こえる「え!? ウソでしょ! 分かっちゃったの!?」という驚きの声。
もちろんですよ、甘いのとしょっぱいの両方持ってきますから。
甘いしょっぱい甘いしょっぱいの無限ループにはまってください。
ガチャ!
ドアノブを捻る、が、うわぁっ! 軽っ!
開閉に抵抗がまったくない。
ドアを開ける分だけの力を入れていたのに、あまりの軽さにバランスが崩れた。
上半身が大きく前に倒れ込み、ダメだ! 転ぶ! 弥生さんの前でカッコ悪っ! と焦ったのに、僕は転ぶコトなく誰かの胸に支えられた。
やだっ! 少女マンガみたい! もしかして恋の始まり!?
チコクチコクと走るそれぞれの男女が、曲がり角の出合い頭でぶつかって、転んで起きて恋に落ちる……の、下位互換じゃないかと顔を上げれば、
「あ! ゴメン! エイミーさんダイジョウブ? 自分と同時にドア開けちゃったんだね。怪我はないかい?」
そこには二日前にも会ったジャッキーさんの本体が立っていた。
「ジャッキーさん! わぁ! 嬉しいなぁ! また会えた! フィギュアのジャッキーさんも好きだけど、やっぱり本体サイコー!」
大好きなジャッキーさんとまた会えたというサプライズに、僕はうっかり抱き着きそうになっていた。
寸前でそれを踏みとどめたのだが……恐ろしい、なにこの抗えない磁力。
僕には大福というハニーがいるというのに、気を引き締めなくては。
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