第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「ジャッキーさん、今日休みじゃなかったでしたっけ? なんで会社に? 嬉しいけど!」 今日のジャッキーさんはカンフースーツではなかった。 濃いめの色のジーンズに、シンプルな黒の長袖Tシャツなのだが、タイトなシルエットのせいか、隆起した筋肉が浮き上がって見えた。 すごい身体だな……この前はダボっとしたカンフースーツだったから気が付かなかったけど、身体だけを見たら社長と見間違えそうな程だ。 腕太っ! 胸板厚っ! キレテル! キレテル! 肩メロン! とてもじゃないが48才、中高年の”高”の方の身体とは思えない。 「うん、代休が4日もあって暇だからね。現場終わって車に置いたままにした分身フィギュアを取りに来たんだ。明日までお休みだし、持ち帰ってメンテナンスしとこうかと思って。……なんてね、ふふふ……ホントは社長の奥様にご挨拶がしたいってのが一番の目的だったんだけどさ」 めちゃくちゃ嬉しそうな顔でコソコソ話すジャッキーさんは、もうね、永遠の少年って感じがするよ、好き、そういうとこも好き。 あれ?  ナニこの胸のトキメキ。 もしかして僕、ジャッキーさんに胃袋掴まれちゃった感じ? 「ユリちゃんにはもう会ったんですか?」 「うん、今さっきね。いやぁ、前回フィギュアを通してお会いしたけど、肉眼で見ると更にキレイなお嬢さんでびっくりしたよ。それにとても優しい子だ。社長もね、乱暴に見えてとても優しい子だから、お似合いの二人だよ。しかも、もう一緒に住んでるんだって。ああ羨ましい!」 ゴツゴツのデカイ手で目を覆い、悶絶するような激しいリアクションで羨ましがるジャッキーさんは、超超遠距離だもんねぇ。 そりゃ、そのリアクションで正しいわ。 「そっか、もう新居は見つかったんですね。二人で住める部屋探すって言ってたけど早いなぁ」 「なんかね、ユリさんの希望で、社長の実家でお父さんと同居してるんだって。社長は二人で住みたかったらしいけど、『お父さんが一人になっちゃう』ってユリさんが」 「やだ……めっちゃ良い子……」 「ホント……話聞いて泣きそうになったよ。あとね、これは個人的なコトなんだけど、社長のお父さんって格闘家の大和でしょ? 自分ファンなんだ。ジャッキー・◯ェンの次に格好いい! 大和と住めるなんて、オジサンにはヨダレものだよ」 ヨダレって、あはは。 そうかぁ、しかしもう一緒にねぇ。 いいねぇ、幸せだねぇ。 入籍は6月だって言ってたよな。 なにかお祝いしなくちゃ!
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