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あ、いかん。
ジャッキーさんに会えて、すっかり忘れてた。
弥生さんのお菓子を取りに行くトコだったんだ。
てか、弥生さん、大人しくない?
キャラ的に、僕とジャッキーさんで話し込んでたら、絶対乱入してくるはずなのに。
「弥生さん?」
振り向いて声を掛ける。
けど、いない。
あれ?
ウソでしょ?
どこ行ったの?
僕とジャッキーさんはドア付近で話し込んでいたんだ。
出入口はこのドアだけ、こっそり部屋を出ていくコトは不可能だ。
ま、まさか、密室失踪事件!?
ウソです、んな訳ないわ。
オフィスデスクの下に弥生さん発見。
なんであんなトコ隠れてんの?
えっと……避難? ナニから?
「おーい、弥生さーん。そんなトコで何してるんですかー? 床に直に座ったら服が汚れますよー」
僕の位置から距離はないけど、冗談めかして両手を口に添えて呼びかけてみる……が、無視された。
「弥生さんがいるの?」
ジャッキーさんに聞かれて、「あそこにいます」とオフィスデスクの下を指さした。
「あ、ホントだ。弥生さん、おつかれさまです」
背中を向けたまま体育座りをする弥生さんは、ジャッキーさんの呼びかけにもやはり無反応だった。
「今日の弥生さん、すごくキレイで可愛いんですよ。メイクを変えてイメチェンだし、髪も見てください。いつもの巻き髪じゃなくてストレートなんです。髪のラインストーンもキラキラのお星さまみたいだし、すごく似合ってるんです。こりゃモテ期来ちゃうなって感じ!」
「髪……?」
そう言って、弥生さんの後ろ姿をジッと見るジャッキーさん。
ブラウンだった髪色が夜空のような黒髪にリカラーされて、その艶髪の低い位置に施したラインストーンの数々。
それはまるで星空のように美しかった。
「ね? キレイでしょ。弥生さんっておしゃれ……」
”ですよね”、という4文字が続けられなかった。
隣に立つジャッキーさんの表情が硬かったのだ。
その顔は明らかに困惑していた。
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