第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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あ、いかん。 ジャッキーさんに会えて、すっかり忘れてた。 弥生さんのお菓子を取りに行くトコだったんだ。 てか、弥生さん、大人しくない? キャラ的に、僕とジャッキーさんで話し込んでたら、絶対乱入してくるはずなのに。 「弥生さん?」 振り向いて声を掛ける。 けど、いない。 あれ? ウソでしょ? どこ行ったの? 僕とジャッキーさんはドア付近で話し込んでいたんだ。 出入口はこのドアだけ、こっそり部屋を出ていくコトは不可能だ。 ま、まさか、密室失踪事件!? ウソです、んな訳ないわ。 オフィスデスクの下に弥生さん発見。 なんであんなトコ隠れてんの? えっと……避難? ナニから? 「おーい、弥生さーん。そんなトコで何してるんですかー? 床に直に座ったら服が汚れますよー」 僕の位置から距離はないけど、冗談めかして両手を口に添えて呼びかけてみる……が、無視された。 「弥生さんがいるの?」 ジャッキーさんに聞かれて、「あそこにいます」とオフィスデスクの下を指さした。 「あ、ホントだ。弥生さん、おつかれさまです」 背中を向けたまま体育座りをする弥生さんは、ジャッキーさんの呼びかけにもやはり無反応だった。 「今日の弥生さん、すごくキレイで可愛いんですよ。メイクを変えてイメチェンだし、髪も見てください。いつもの巻き髪じゃなくてストレートなんです。髪のラインストーンもキラキラのお星さまみたいだし、すごく似合ってるんです。こりゃモテ期来ちゃうなって感じ!」 「髪……?」 そう言って、弥生さんの後ろ姿をジッと見るジャッキーさん。 ブラウンだった髪色が夜空のような黒髪にリカラーされて、その艶髪の低い位置に施したラインストーンの数々。 それはまるで星空のように美しかった。 「ね? キレイでしょ。弥生さんっておしゃれ……」 ”ですよね”、という4文字が続けられなかった。 隣に立つジャッキーさんの表情が硬かったのだ。 その顔は明らかに困惑していた。
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