第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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黙り込む先輩霊媒師二人の間で、僕は非常に戸惑っていた。 「あの……ジャッキーさん? 弥生さん? どうしたんですか?」 なにやら妙な不穏さを感じる。 なにがって分からないけどさ、空気が重くて、この部屋から出ていきたいなーなんて思っちゃう。 てか、なんだろ? 本当に出て行った方がいいかな? 「あの……僕、席外しますね」 短く言って出ていこうとしたのをジャッキーさんが引き止めた。 「待ってエイミーさん、このままここにいてくれないかな。……ほら、いくら会社の同僚でも、女性と二人で部屋にいるのはいただけない。あらぬ誤解を生む事になる」 え、そうなの? 僕さっきまで、この部屋で弥生さんと二人きりでメイクと髪の話してましたが、それも誤解されちゃうの? って、ないか。 「誤解生むってナニ? 感じ悪いな! いいよ、アタシが出てくから!(ゴチッッ!!)痛ッ……」 オフィスデスクの下から、怒鳴りながら立ち上がろうとするものだから、弥生さんはしたたかに頭を打った。 「弥生さん!」 先に動いたのはジャッキーさんだった。 「ジャッキー……」 打った頭に手をやりつつ振り返る弥生さんの目は真っ赤だった。 かわいそうに、そんなに痛かったのか。 「僕、給湯室(した)行ってタオル濡らしてきます! ジャッキーさんは弥生さんを見ててあげてください! ドアは開けっ放しにしときますから、それならいいでしょう?」 返事も聞かずに飛び出して、1階の給湯室目指して走り出した僕の背中には、弥生さんの泣き声のようなものが聞こえた気がした。 エレベーターは使わず階段を駆け下がり、給湯室のストックタオルを水で濡らして固く絞ると、そのままトンボ帰りに階段を駆け上がる。 ヤバ……ちょっと息が切れた。 本当なら廊下もダッシュしたいトコだけど無理。 ゴメン、ちょっとスピードダウン。 その廊下に漏れるように弥生さんの半べそな声が聞こえてきた。 え……? あの弥生さんが泣いてるの? マジか……よっぽど痛いんだな……待ってて、すぐに冷やしましょう!  タオルはココです! 「その気もないのに優しくするなよ!」 それは本気の怒鳴り声だった。 僕はドアの手前で固まってしまう。 「いいから。今は大人しく打った所を見せてくれ。弥生、お願いだよ」 弥生さん……どうしたんですか? ジャッキーさんも変だ、弥生さんを呼び捨てにしてる……さっき僕の前では“弥生さん”だったのに。 「来るな! ちょっとぶつけただけだ、大したコトない!」 「大した事あるかないかは自分が確かめる。だからちゃんと見せてくれ」 「いやよ! 絶対見せないから!」 えっと……なにがどうなっちゃってるんでしょう?
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