第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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ガシャン! 弥生さん、なにか物を投げたのだろうか? すごい音がした……と思ってたら、空いたままのドアから出てきたジャッキーさんと目が合った。 「あ……ご、ごめんなさい! 立ち聞きするつもりじゃなかったんだけど、雰囲気がおかしくて……その、ここにいた方がいいかなって、」 結果として一部始終を聞いたのだ。 ジャッキーさんに怒られても文句は言えない。 だが、 「いいんだ、ありがとう。エイミーさん、ごめんね。辛い役をさせちゃった。……それとこの事は誰にも言わないで。自分とエイミーさんの秘密にして」 と責めたりしない。 辛い役をさせちゃったと謝るジャッキーさんの方がもっと辛そうだった。 「……もちろん、誰にも言いません。僕……三歩歩くと忘れちゃうんです。きっと、この後忘れちゃいます」 嘘だ。 絶対に忘れられない。 そして絶対に誰にも言わない。 「ありがとう、優しい子だね。それから……悪いんだけど、弥生さんの傍にいてあげてくれる? 頭を打ってるからね、大した事なければいいんだけど、後から気持ち悪くなったりもするから」 「分かりました。どうせ今日は依頼も入らないだろうし、この後ずっと弥生さんの傍にいます」 「うん、お願い。じゃあ、自分はこのまま帰るよ。あ、そうそう、黒十字さんがね、引きこもりボランティア団体に連絡を入れたそうなんだ。彼も頑張って立ち直ろうとしてくれてる。電話で少し話したけど、エイミーさんと水渦(みうず)さんにもヨロシクって」 「そうですか! 黒十字さんが……良かった。気になってたんですよね」 じゃあ、と軽く手をあげて帰っていったジャッキーさんのゴツイ背中を見送った。 弥生さん、ジャッキーさんの事が好きだったんだな。 ぜんぜん知らなかった。 でも……ジャッキーさんには奥様がいる。 僕は、弥生さんになんと声をかければいいんだろう?
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