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ガシャン!
弥生さん、なにか物を投げたのだろうか?
すごい音がした……と思ってたら、空いたままのドアから出てきたジャッキーさんと目が合った。
「あ……ご、ごめんなさい! 立ち聞きするつもりじゃなかったんだけど、雰囲気がおかしくて……その、ここにいた方がいいかなって、」
結果として一部始終を聞いたのだ。
ジャッキーさんに怒られても文句は言えない。
だが、
「いいんだ、ありがとう。エイミーさん、ごめんね。辛い役をさせちゃった。……それとこの事は誰にも言わないで。自分とエイミーさんの秘密にして」
と責めたりしない。
辛い役をさせちゃったと謝るジャッキーさんの方がもっと辛そうだった。
「……もちろん、誰にも言いません。僕……三歩歩くと忘れちゃうんです。きっと、この後忘れちゃいます」
嘘だ。
絶対に忘れられない。
そして絶対に誰にも言わない。
「ありがとう、優しい子だね。それから……悪いんだけど、弥生さんの傍にいてあげてくれる? 頭を打ってるからね、大した事なければいいんだけど、後から気持ち悪くなったりもするから」
「分かりました。どうせ今日は依頼も入らないだろうし、この後ずっと弥生さんの傍にいます」
「うん、お願い。じゃあ、自分はこのまま帰るよ。あ、そうそう、黒十字さんがね、引きこもりボランティア団体に連絡を入れたそうなんだ。彼も頑張って立ち直ろうとしてくれてる。電話で少し話したけど、エイミーさんと水渦さんにもヨロシクって」
「そうですか! 黒十字さんが……良かった。気になってたんですよね」
じゃあ、と軽く手をあげて帰っていったジャッキーさんのゴツイ背中を見送った。
弥生さん、ジャッキーさんの事が好きだったんだな。
ぜんぜん知らなかった。
でも……ジャッキーさんには奥様がいる。
僕は、弥生さんになんと声をかければいいんだろう?
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