第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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依代ジャッキーフィギュアをリュックに詰めて、遠方から戻ってこれるのは、始発で出ても深夜になった。 ジャッキーさんは終電に乗って帰ってくる弥生さんを、毎晩駅まで迎えに来てくれたそうだ。 「子供じゃないんだから一人で帰ってこれるよ。そんな時間があるなら術の練習してよって言ったんだ。でもね『夜道は危ないだろう?』って来ちゃうんだ」   困ったように笑う弥生さんだが、そうやって女の子扱いしてくれるのが嬉しくてたまらなかったのだという。 「エイミーちゃんには前も言ったと思うけど、ほらアタシ、元ヤンじゃん」 え、え、え、え? 初耳ですが、そうなんですか? 「元ヤンは夜道くらいじゃビビらない。 昔のヤンキーってガチで喧嘩するからさ、嫌でも鍛えられるんだ。アタシは女で腕力では男にかなわない。それでも誰にも負けたくなかったし、野郎に襲われるのも御免だから、色んな戦い方を覚えたんだ」 言いながらワンピースの袖を捲り上げると、二の腕から肘にかけて大きな傷跡が残っている。 一番目立つ腕の傷跡以外にも、細かな傷がたくさんあって、どんな感じの学生生活だったのか垣間見た気がした。 「自慢できた事じゃないけどさ、でも無駄ではなかったよ。だってこの仕事、悪霊相手じゃ戦うしかないだろう? してきた喧嘩が役に立ってる。ぶっちゃけ頭の狂ったヤンキーと喧嘩するより、その辺の悪霊の方が楽だもん。あ、だからエイミーちゃんも少し鍛えた方がいいよ? なんならアタシが鍛えてあげる。 ま、そんなだから仲間内でアタシを女扱いするのはまずいない。ジャッキーだけだよ、か弱い女の子みたいに扱ってくれるのは。それがすごく新鮮で嬉しかったんだ」 弥生さんの基本敵無しスタイルは、元ヤンゆえに体術に長けているという根拠があったのだ。 ん?  喧嘩って平たく言ったら体術でいいんだよね? てか、本当に僕も鍛えよう。 悪霊と戦っても100パー負ける自信があるわ。
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