2366人が本棚に入れています
本棚に追加
「とりあえず……こちらのご婦人をお待たせするのもなんだし、どうして呼べるのかの説明は家に帰ってからするよ。先に送り出そう」
そう言って、命の無い老婦人をジャッキーさんの横につけた。
そして、スゥっと息を吸い込むと、手を胸に当て大声を張った。
「【光道開通部】のみんなーっ! ジャッキーだー! 誰か着台してるかー? おーい! 聞こえたら返事してー!」
コウドウカイツウブ……?
なんだそれは、ジャッキーはどこの誰に話しかけてるんだ?
目の前では、天に向かって大きな声を出し続ける後輩霊媒師がいて、その先には生者はもちろん死者すらいない。
何をしているのか、さっぱり分からない。
そんな弥生さんの目の前で、突如ジャッキーさんは、今までに聞いた事のない弾んだ声をあげた。
「………………マジョリカ! ああ、マジョ嬉しいよ、アナタが応答してくれるなんて最高だ! ねぇ今日は現場じゃないの? ……ああ、そうか、これから一人迎えに行くのか……じゃあ今夜は話せないね……うん、そうだな、今話せて良かった。応答がなければ現場だなぁって思うけど、やっぱりマジョと話せないと辛いよ。ああ、自分もだ……もちろんだ、同じだよ。ん? ああ、そうだった。あのね、光る道を1本伸ばしてほしいんだ。今、仕事中でね。場所は? 言わなくても捕捉できる? うん、そう、さすがだね。え? あははは、うん、うん、わかった。5分後に来るんだな。待ってるよ、ありがとう。うん、マジョリカ……自分もだ、愛してる」
……
…………
………………
ジャッキ……?
今……誰と話してたの?
誰もいないじゃない、
アタシには姿も視えないし声も聞こえなかったけど、相手はマジョリカって人なの?
マジョリカって誰なの?
ジャッキーのあんなにはしゃいだ声、初めて聞いたよ、
マジョリカって人が相手だから?
なんでその人に光る道を頼むの?
ねぇ、……最後、アイシテルって言った?
どういうことなの?
弥生さんの心臓はバクバク音をさせていたと言っていた。
色々聞きたい事はあったけど、間もなくして本当に光る道がやってきた。
金色に輝いて、長い事独り縛られていた老婦人の足元までそれを伸ばす。
ジャッキーさんは、
「さぁ、ご婦人。この道を真っ直ぐに。道中、楽しんでらしてください。驚くような絶景が見られますよ。ゆっくりのんびり、お気をつけて」
と送り出す。
その時ジャッキーさんは、光る道の起点にしゃがみこむと何かを手に取った。
弥生さんはジャッキーさんの手元をジッと見つめる。
その手には視た事のない綺麗な花があった。
柔らかそうな花びらでうっすらと発光し、色は艶のあるローズピンクだった。
最初のコメントを投稿しよう!