第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「とりあえず……こちらのご婦人をお待たせするのもなんだし、どうして呼べるのかの説明は家に帰ってからするよ。先に送り出そう」 そう言って、命の無い老婦人をジャッキーさんの横につけた。 そして、スゥっと息を吸い込むと、手を胸に当て大声を張った。 「【光道(こうどう)開通部】のみんなーっ! ジャッキーだー! 誰か着台してるかー? おーい! 聞こえたら返事してー!」 コウドウカイツウブ……? なんだそれは、ジャッキーはどこの誰に話しかけてるんだ? 目の前では、天に向かって大きな声を出し続ける後輩霊媒師がいて、その先には生者はもちろん死者すらいない。 何をしているのか、さっぱり分からない。 そんな弥生さんの目の前で、突如ジャッキーさんは、今までに聞いた事のない弾んだ声をあげた。 「………………マジョリカ! ああ、マジョ嬉しいよ、アナタが応答してくれるなんて最高だ! ねぇ今日は現場じゃないの? ……ああ、そうか、これから一人迎えに行くのか……じゃあ今夜は話せないね……うん、そうだな、今話せて良かった。応答がなければ現場だなぁって思うけど、やっぱりマジョと話せないと辛いよ。ああ、自分もだ……もちろんだ、同じだよ。ん? ああ、そうだった。あのね、光る道を1本伸ばしてほしいんだ。今、仕事中でね。場所は? 言わなくても捕捉できる? うん、そう、さすがだね。え? あははは、うん、うん、わかった。5分後に来るんだな。待ってるよ、ありがとう。うん、マジョリカ……自分もだ、愛してる」 …… ………… ……………… ジャッキ……? 今……誰と話してたの? 誰もいないじゃない、 アタシには姿も視えないし声も聞こえなかったけど、相手はマジョリカって人なの? マジョリカって誰なの? ジャッキーのあんなにはしゃいだ声、初めて聞いたよ、 マジョリカって人が相手だから? なんでその人に光る道を頼むの? ねぇ、……最後、アイシテルって言った? どういうことなの? 弥生さんの心臓はバクバク音をさせていたと言っていた。 色々聞きたい事はあったけど、間もなくして本当に光る道がやってきた。 金色(こんじき)に輝いて、長い事独り縛られていた老婦人の足元までそれを伸ばす。 ジャッキーさんは、 「さぁ、ご婦人。この道を真っ直ぐに。道中、楽しんでらしてください。驚くような絶景が見られますよ。ゆっくりのんびり、お気をつけて」 と送り出す。 その時ジャッキーさんは、光る道の起点にしゃがみこむと何かを手に取った。 弥生さんはジャッキーさんの手元をジッと見つめる。 その手には視た事のない綺麗な花があった。 柔らかそうな花びらでうっすらと発光し、色は艶のあるローズピンクだった。
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