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「弥生……どうした……? 目が真っ赤だ、泣いてるのか? どこか痛いのか? それとも、」
ジャッキーはアタシがなんで泣いているのか、ホントに分かってないのかな?
一度は好きだって、アンタのカノジョになりたいって言った女だよ?
泣いてるのはアンタが既婚者だって知ったからだよ、他にあるかよ、
あのさぁ、なんでアタシが告白した時、奥さんいるコト教えてくれなかったの?
好きになってすぐの頃なら、諦められたかもしれないのに、
こんなに好きにさせといて、今さら奥さんがいるって言われても、
死者だから説明が面倒?
知るかよ、そんなのアンタの都合だ、
まったくさ、アタシを好きにならないクセに、どんどん好きにさせるクセに、中途半端に優しくして、アンタなんか本当に、大っ____
もうどうでもいいや。
なんかメンドクサイ。
アタシは基本女王様で、
本来は尽くすタイプじゃないんだよ。
「別に、目が少し痛いだけだ。なぁ、ジャッキー。この訓練もあと3日で終わりだな。これが終わったら出て行くよ」
「ああ、そうか、淋しくなる。弥生には本当に助け……いや、ちょっと待て。さっきから涙がとまらないじゃないか。こすらないで自分に見せて?」
見当違いなジャッキーがアタシの目を覗き込んできた。
息がかかる。
もうどうでもいいや。
ほんとメンドクサイ。
アタシは基本肉食だ。
欲しいモノは自分から取りにいく。
「目は心配だ、仕事にも支障が出る。弥生、明日は訓練を休んで朝一番で病院に行くぞ。自分も一緒だ」
ウルサイな。
痛いのは目じゃないし、分からない?
ああ、腹が立つ。
腹が立ってイライラちゃって我慢も限界。
ナニ必死にアタシの心配してんだよ。
そんなコトよりアンタの唇はガサガサだ、
割れて血が滲んでる、
リップつけなよ、
気になっちゃう、
早く、今すぐ、
でないと____
「とりあえず目を冷やそう。待ってて、アイシングを取ってくる」
____そんなのいらない、ほしいのは、いつだって、ずっと、もうずっと、ああ、もう知らない、みんなアンタが悪いんだ、どうにでもなればいい、
アタシは上げた手の先、指に届いた短い髪を鷲掴む。
そしてそのまま力任せに引っ張って、荒れた唇にぶつけるようなキスをした。
近すぎる距離の中、アンタと斜めに目が合った。
もうどうでもいいや。
訓練も、マジョリカも、何もかも知ったこっちゃないよ。
荒れた唇からはほんのりビールの味がする。
そりゃそうか、二人とも飲んでいるんだがら。
ジャッキーがなにか言っているけど、
耳の奥がズキズキ痛くて、心臓が破裂しそうで、なんにも聞こえてこないんだ。
やめろとか、ちょっと待てとか、せいぜいそんなところかな?
ごめんね知らない、嫌なら自分で振りほどいてよ。
って、無理か。
できる訳ないよね、アンタ優しいもん。
力じゃ男にかなわない。
つまみがわりに、さっきアタシが用意した。
剥いた果物に添えた小さなフォーク。
それをアタシは左手に、自分の首に当てている。
勘のいいジャッキーは気が付いたんでしょ?
キスを拒めば、アタシは首に突き刺すだけ。
優しいジャッキーには脅しになるんじゃないかと思ったの。
案の定、コイツは言いなりされるがまま。
あははは、
なぁんだ、こんなに簡単なコトだったんだ。
今、アタシはジャッキーとキスしてる。
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