第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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それにしても笑っちゃう、 今までキスくらいしたコトあるけど、フォーク持っては初めてだ。 想像の中でなら。 アタシとコイツは何百回もキスしたし、もっとスゴイコトもした。 想像じゃない、やっと本物とキス出来たんだ。 まぁ、脅してますが、だからナニ? 先月の戦闘訓練最終日、あの時ジャッキーを組み敷いて、そのままキスしちゃおうと思ったけど、拒まれたらと思ったら、やっぱり怖くて出来なかった。 それがどうよ、拒否権無し。 今はアタシの独壇場だ。 もっと早くこうすりゃ良かった。 明日から3日間、訓練は休みにしよう。 ずっとこうしてるんだ。 いいだろ? だってこの三カ月、休み無しだったんだから。 「……ッ! フォークを離、」 だからウルサイよ。 握ったフォークに力を込めて、首の皮に食い込ませる。 あはは、チョロイな、静かに出来て100点あげます。 ああ、だけど、コレもそんなに持たないだろうなぁ。 身体能力もジャッキーの方が上だ。 そのうち隙見て取り上げられて、こっぴどく怒られて、睨まれて、軽蔑されて、下手したら平手くらいはされちゃうかも。 でもいいんだ。 それですっごく嫌ってくれれば、アタシもきっと諦められる。 このキスは三カ月頑張ったアタシのご褒美だ。 ジャッキーにはもう逢えないっていうオマケ付き。 どうせ、そんなに長くできないなら思いっきり楽しもう。 アタシはジャッキーとのキスに夢心地だった。 夢にまで見た唇に泣きそうになった。 「おち……つけっ! おい、やよ」 しつこいなぁ。 キスくらいじゃ奥さんだって浮気のカウントに入れないよ。 ガキじゃあるまいし、って17か。 いや違った34か? 考えるのメンドクサイ、どっちだっていいや。 アタシは調子に乗っていた。 180cmもあるデカイ図体で、コイツは今、アタシの言いなりだ。 たとえばキスを拒んでも、痛いのはアタシだけ。 ジャッキーは無傷でいられるのに、アタシを庇ってされるがままだ。 庇って……? ああ、そうだったな、初めて会った時、コイツはアタシを守ろうとしたんだ。 初めて会った時だけじゃない。 ツーマンセルの現場でも、何度も何度もアタシを庇い守ってくれた。 ふざけんな、だから好きになっちゃうんだよ。 あーどうしよ。 キスだけじゃ物足りなくなってきた。 でも左手はフォーク、右手はコイツの髪を掴んでいるから手が足りない。 「やよ……自分の話を……」 聞くもんか。 無視して唇を離さない。 キスってこんなにドキドキしたんだっけ? 好きな男とするキスは最高だ。 ………… ……………… ジャッキーは今、どんな気持ちなんだろう? 好きでもないアタシにこんなコトされて、嫌だって思ってるかな? 心の中で奥さんに謝ってるのかな? アタシのキス、気持ち悪いって思ってるのかな?
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