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そう考たら怖くて不安で、確かめたくて仕方がない。
思った事はみんな口に出しちゃうバカなアタシは唇を離して、直接ジャッキーに聞いたんだ。
「アタシにキスされて気持ち悪いか?」
おかしいなぁ、涙が止まらない。
それになんだか喉も渇くし、手も震える。
「弥生……どうしたんだ、いきなり、」
「いいから答えて、アタシにキスされて気持ち悪い? 嫌だって思ってる? 奥さんに悪いって思ってる?」
フォークを首に食い込まれせば、痛みの分だけ不安が消える。
こうすれば言うコト聞いてくれるんだ、聞いたコトにも答えてくれるんだ、
「弥生……答えるから……だからそんなにしないで……ああ、奥さんには悪いと思ってるよ、浮気はしないと約束したのに」
「本気で言ってる? アタシに脅されてのキスじゃない。ダイジョウブ、セーフだよ」
「セーフって……」
「あと二つ、アタシにキスされて嫌か? 気持ち悪いか?」
「気持ち悪いとは思わないよ。弥生とキスしたくない男なんてきっといない」
「……ジャッキーも?」
「自分は既婚者だ。奥さん以外とキスしたらいけないんだ」
「言ってろ。で、もう一つ……やっぱりこんなの嫌だったか?」
「…………うん、嫌だ」
「…………そうか、だよな、」
「弥生がこんなに泣いてるのが嫌だ。アナタを見てると自分も泣きそうだ」
なに言ってんだ、この男は。
なんでアンタが泣きそうになるんだよ。
「……怒ってないのか?」
「怒ってないよ、驚きはしたけどね。ねぇ弥生、お願いだ。自分にフォークを寄越して? 危ないよ」
なんで怒らないの?
なんで責めないの?
優しい顔で、ゴツゴツの指で、アタシの涙を拭ってくれる。
やめてよ、また好きになっちゃうじゃん。
勘弁してよ。
「…………嫌だよ、渡さない……だって、これがないとキス出来ない……」
アタシがそう言うと、ジャッキーは困った顔で笑った。
そして、びっくりするような事を言った。
「ん……そんなにイヤか。分かった、ならこうしよう。フォークはそのまま持ってていいよ。そのかわり、弥生じゃなくて自分の首に当てればいい。自分はけっこう痛いのに弱いんだ。充分効果はあると思うよ?」
「な、なに言ってんの!? そんなコト出来ない!」
意味が分からない、なんでわざわざ……アンタバカなの?
「どうして? 弥生の首でも自分の首でも、脅しの効果は同じだよ。だったら自分にしてよ。その方がいいんだよ。弥生が怪我するかもと思うと心臓に悪いんだ。ほら、早く」
向かい合った至近距。
ジャッキーの手がゆっくりと、アタシの左手に伸びてくる。
「ヤメテよ! 動かないで!」
「弥生、落ち着いて。取り上げる訳じゃないから、」
ウソだ、ウソだよ、絶対に取り上げる、ああでも違う。
コイツの目にウソが見えない、本気で言ってるんだ。
アンタバカなの? ねぇバカなの?
だってフォークをアンタの首に当てたとして、もしもアタシがキレて、アンタの首に突き刺したら下手すりゃ死んじゃうんだよ?
怖くないの?
どうしてそんなコト簡単に言えるの?
……
…………
………………ああ、
そうか……分かっちゃったよ、ああ、やだな、気付かなきゃよかった。
コイツは……ジャッキーは、死ぬのが怖くないんだ。
命が終わればマジョリカに逢えるから、マジョリカとずっと一緒にいれるから、だから怖くないんだ。
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