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階段がギシギシいっている。
アタシ……重たくないのかな?
しばらく体重は測ってないけど、変わってなければ42kgのはずだ。
ああ、でもこの3カ月。
めちゃくちゃ身体動かしてるから筋肉量が増えて、その分重くなってるかもしれない。
恥ずかしいなぁ、でもいっか。
下から見た表情は辛そうじゃあないし、考えるのがめんどくさい。
階段が終わり、薄暗い廊下を進んで部屋のドアが開けられた。
抱かれたまま中に連れられて、やたら大きなベッドが目に入ると、それまで心は空っぽだったはずなのに、ドキンと心臓が跳ね上がった。
コイツはナニを考えているんだろう?
訓練の効率化を考えて、しばらくこの家に住みたいと言った時、「絶対にダメだ」と頑なだったのに、どうにか説得して一緒に住む事になった時も、「生活スペースを分ける、絶対に自分のいる2階には来るな」と念を押していたのに。
アタシを抱くのかな?
真意が分からず、上を向いて盗み見る。
だけどやっぱり分からない、下から見る顔は今一つ表情が分からない。
それよりも気になるのが……片耳だけにある血色のような赤いピアス。
前からつけてるのは知っていたけど、気にしたコトはなかった。
男でピアスをしてるヤツなんていっぱいいる、珍しくもない。
なのに今夜はすごく気になる。
抱かれたまま、アタシはそっとソレに手を伸ばす。
血色に届く寸前、指先に針が刺さったような鋭い痛みが走った。
今のは静電気……?
いや、違う。
目を閉じれば強い思念を感じる……ピアスは全力でアタシを拒んでる。
これは……マジョリカに関係するモノだ。
マジョリカが怒ってる。
……
…………いいじゃんか。
会ったコトはないけどさ、アンタすごい愛されてるじゃん。
アタシが欲しくて欲しくてたまらないジャッキーを独り占めしてるじゃん。
少しだけ譲ってよ。
ほんの数時間でいいからさ。
それくらいの権利はあると思うんだ。
だってそうだろ?
アンタは今どこにいる?
黄泉の国じゃないか。
ジャッキーが仕事で窮地に立って、限られた期間で無茶なスキルを習得しなくちゃならなくて、そりゃコイツなら出来るけど、だけどやっぱり大変で、休みなんて1日も無くて、毎日毎日必死になって努力して。
それを支えたのは現世にいるアタシだよ、黄泉の国のマジョリカじゃない。
アンタはズルイよ、離れていても存在だけでジャッキーを縛るんだ。
アンタがいなければきっとアタシが愛されてた。
たわいない話で笑い合って、キスされて淫らに抱かれて、アイシテルって何度も言われて、楽しい時だけじゃない、苦労があっても一緒に頑張って乗り越えるんだ。
それでさ、結婚してさ、ジャッキーにそっくりな子供をたくさん産んでさ、家族になってさ、二人はお父ちゃんとお母ちゃんになってさ、一緒に年を取ってさ、死ぬ瞬間まで手を繋いで離さないの。
……
…………
ああ、キツイな。
ダメだ。
いろんな事がありすぎて、思い通りにならなくて、心がどうにかなりそうだ。
考え込むにはアタシの頭は悪すぎる。
陰でグダグダ言うのも性に合わない。
いっそのこと、マジョリカに直接喧嘩を売りに逝こうかな____
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