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「降ろすぞ、」
囁くような低音に我に返る。
まるで壊れ物を扱うように、ジャッキーはアタシをベッドの上に寝かせた。
ああ、ココはいいな。
部屋もベッドも、ジャッキーの匂いでいっぱいだ。
すごく心地良くて安心する、それだけで涙が溢れる。
ねぇ、好きだよ、好きなの。
ジャッキーはアタシの上に毛布を掛けて、ベッドの中には入らずに、横に座って髪をずっと撫ぜていてくれた。
「寒くないか?」
毛布がすごく温かくて寒くはなかったけど、アタシは返事が出来なかった。
もしまだ寒いって言ったらどうするの?
隣で一緒に寝てくれる?
アタシを抱きしめてくれる?
ジャッキーからキスしてくれる?
なにも答えないアタシを心配そうに眺めるジャッキーは、小さく「ごめんな」と呟いた。
「…………なにが、ごめんなの?」
アタシがそう聞き返すと少し驚いた顔をして、「昔、同じように聞かれたコトがあったよ」と息を吐いた。
それはマジョリカが言ったの?
どうせ聞いても答えてくれないだろうけど、その気になれば霊視コトも出来るけど、いやだ、知りたくない。
「弥生の気持ちに気が付いてやれなくてごめんな。辛かったな」
髪を撫ぜ、頬を撫ぜ、ジャッキーは泣き出しそうな顔でそう言った。
アタシは溜息をついた。
「前に言ったよ、アタシ。ツーマンセルの現場の車の中でさ、ジャッキーが好きだって、付き合ってほしいって、カノジョになりたいって。忘れちゃったの?」
「忘れてないよ、覚えてる。だけど、あの時自分は付き合えないって言っただろう?」
「うん、言われた、妹みたいな存在だって振られたんだ」
「あれから何年経った? 約2年だ。弥生はとっくに自分のコトなんか好きじゃないと思ってた」
「なにそれ……じゃあなんで今ココにいると思ってるの? なんで3カ月も休み無しで一緒に頑張ってると思ってるの? ただの後輩ならそこまで出来ない。振られてもツーマンセルNG食らっても、それでもアンタのコトが好きで、忘れられなくて、諦められなかったからだよ」
言ってて泣きそうだった。
そこまで言わないと分からないの?
ジャッキーは決して人の気持ちに鈍い方じゃない、気遣いのできるヤツだ。
なのに……気付かなかったのは、マジョリカのコトで頭がいっぱいだったからじゃないの?
「そうか……ごめんな。会社の中でも弥生は面倒見がいいだろう? みんなに優しい弥生だから、クビになりそうな自分に親身なのもの、それと同じだと思ってた」
「アタシにとって、他の奴らとアンタじゃぜんぜん違う。フツー分かるだろ、気付けよ、ずっと好きだバカ」
「そうか……」
ジャッキーの指がアタシの頬をすーっと撫ぜる。
指先の体温が熱いくらいで心地が良かった。
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