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「自分は何を見てたんだろうな。10も年下の弥生に甘えて、辛い思いをさせて……ごめんな」
何度も謝るジャッキーに返事が出来なかった。
”気付くの遅いよ”って、いっぱい文句を言いたいのに、頬に触れるゴツイ指が温かすぎて、今何かを言えば、たぶん”好き”しか言葉が出ない。
「男は……いや、自分はダメなんだ。目の前の女が笑っていればそれがすべてだと思ってしまう。不安や不満があっても隠されたら気が付けない。当たり散らしてくれるくらいでやっと分かるんだ。お願いだ、これからは言ってくれ。弥生が苦しむのはいやなんだ」
そんなふうに素直に謝られたら怒れないや。
もういいよ、アタシも強がりすぎたんだ。
それにもし当たり散らしたとして、そしたらきっとアタシから離れていっただろう?
当たり散らして許されるのはマジョリカだけなんだろう?
だったらアタシに選択肢はないよ、好きを隠して、笑って笑って傷つく事と引き換えに、僅かな時間を得るだけだ。
だけど……だけどさ、それは分かってるんだけどさ、今みたいに優しくされると期待しちゃうよ、もしかしたらって思っちゃうよ。
「ねぇ、」
声が掠れる。
喉か張り付くみたいに締まってる。
「なんだ?」
うわ、こっちが”なんだ?”だよ、ベッドの横に座るジャッキーは、アタシに身を乗り出して距離を詰める。
近いな……このままキスしてくれたらいいのに。
「喉……渇いちゃった」
「分かった、」
1階に行くのかなって思ったのに、部屋の中には小箱みたいな冷蔵庫があって、そこから出した炭酸を見せながら「これでいいか?」と聞いてきた。
開けた扉から暖色の光が漏れている。
薄暗い部屋の中、ジャッキーの姿が浮かんで見えた。
引き締まった腰、そこに乗る逆三角形の厚みのある上半身 、硬そうな太い腕に太い首。
骨太の輪郭に通った鼻筋と、その左右に配置された大きな目は垂れ気味でいつだって優しいんだ。
唇はガサガサと荒れていて、たまに割れて血が滲む。
すべてが愛しくてすべてに惹かれる。
ああ……やっぱりいい男だなぁなんて思いながら、「うん」と答えると、すぐにベッドの横まで戻ってくれた。
だるい身体を無理やり起こし、開けてくれたペットボトルをゴクゴクと喉に流し込む……ああ、おいしい。
ぷはぁと口を放し「ん、」とジャッキーに手渡すと、気にする様子もなくゴクゴクと飲みだした。
たったそれだけの事なのに、アタシはまた泣きそうになっていた。
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