第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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沈黙で脳ミソが腐りそう。 ジャッキーはアタシの質問に答えてくれただけ。 アタシは食い下がって得た答えに勝手に落ちているだけ。 結果と順番は関係ない。 おまえはマジョリカにはかなわない、そう言うコトでしょ? アタシ、バカみたいだ。 ”もしも先に出逢っていたら弥生を愛してた” なんて、ウソでも良いから言われたかった。 ____4 仮にさ、アタシがジャッキーに恋をしてなくて、関係はただの会社の先輩後輩だったなら、マジョリカの話を聞いても落ち込まなかっただろうな。 良い奥さんじゃないって言ったと思う。 マジョリカと一緒に飲んでみたいとさえ思うかもしれない。 あー聞くんじゃなかった。 「弥生。大丈夫か、」 女の気持ちに鈍いジャッキーでも、さすがに今も(・・)好きだと知ってしまったアタシに気を遣っているようで、「マジョリカの話はもうよそう」と飲みかけの炭酸を寄越した。 アタシが飲んでジャッキーが飲んで、またアタシが飲む。 少しだけ気の抜けた炭酸は甘味を増していた。 「なにも感じなくなればいいのにな。悲しむ事も、欲する事もぜんぶ無駄だって、そんな事疲れるだけだって、そう思えればいいのにな」 素直にそう思ったんだ。 構ってほしくて本心とは違う自虐的発言をしてるんじゃなくてさ、好きで好きで仕方なくて、この三カ月訓練はハードだったけど一緒にいられて幸せで、もしかしたら、今なら、もう一度好きだと言ったら、何かが変わるんじゃないかって期待して、なのにマジョリカの存在を知ってしまって、夢も希望も打ち砕かれて、ジャッキーを脅してまでキスをして、でもそれはやっぱり心から喜べなくて、罪悪感と申し訳なさが渦巻いて、悪いのはアタシなのに、ジャッキーはすごくすごく優しくてさ。 アタシの気持ち、初めて知ったマジョリカの存在、ジャッキーの優しさ過剰、これらをどう処理していいのか分からなくって、だったらもう何も感じなくればいいのにって。 挑む前から逃げるみたいでアレだけど、もう疲れちゃったよ、完全にキャパオーバー、崩壊寸前。 ____3 「そんなふうに言うな。悲しむ事も、欲する事も無駄じゃない」 アタシの髪を撫ぜ続けるジャッキーは、真っ直ぐ見つめてそう断言した。 欲する事も無駄じゃない……それ、アンタが言うか? 「……ぷっ」 「何がおかしい、自分は真面目に言っている、」 広すぎるベッドなのに、アタシははじっこギリギリに横になる。 頑なにベッドに入らないジャッキーの近くにいたいからだ。 アタシは限界までにじり寄り、こう言ってやった。
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