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「だってさ、アタシが欲してるのはアンタだよ。だけどアンタはアタシを拒むじゃないか。欲されても拒むアンタが”欲する事も無駄じゃない”って、どんだけ矛盾してるかワカルか? この二年ずっと無駄にさせてきたクセに。知らなかったわ、アンタって偽善者だ。どんだけ残酷なコト言ってるのかワカルか? それともワザとか? ソレ楽しいか? 偽善じゃないって? なら抱けよ、今すぐアタシを抱いて、マジョリカに言ったみたいに“愛してる”ってアタシにも言えよ、欲する事が無駄じゃないと証明しろよ」
____2
ホラ早くと、アタシの荒れた感情をぶつけたくて、気持ちの痛みを移したくって、ピアスの耳に痕がつくほど爪を立てた。
マジョリカは相も変わらず全力で拒んでて、アタシの爪は剥がれそうにジンジン痛む。
「偽善者か、そうかもしれないな。だが自分は既婚者で妻がいる。弥生の気持ちに応えたくても応える事はできないんだ、分かってくれ」
しつこく爪を立てるのがウザイのか、軽く顔を背けたジャッキーがアタシの手首を掴む。
「だよねぇ、既婚者サマにはいくら望んでも無駄なんだ。どんなに欲しても叶わなくて、歯を食い縛るほど辛いなら、最初から閉ざした方が賢いだろ? いいかげん傷付くのも飽きたんだ、分かってくださいよ、志村さん」
____1
掴まれていない反対の手で、同じように耳朶をつねってやると、眉間にシワを寄せたジャッキーは小さく舌を打ち、片手でアタシの両手を封じてしまった。
大きな片手にアタシの両手は掴まれて、もう爪を立てるコトは出来なくなった。
ジャッキーは困ったような顔をして、
「弥生が聞いたんだろう、拗ねてつねるなんてヤメテくれ」
なんて言ったんだ。
____0、
ああああッ! なんだよそれッ! もうダメだ限界だッ!
アンタそういうコト言うんだ!
もうやだ! やだやだやだ!
ジャッキーが言ったんだんじゃないか!
不安や不満を言っても良いって!
バカみたいな質問だよ、自分でも分かってる!
でもさ、同じコト聞いても、爪を立ててもマジョリカなら怒らないんだろう?
喜んで聞いてやるんだろう?
痛みすら受け止めるんだろう?
ああ、すごくやだ、今のアタシすごく卑屈だ!!
悲しいのに情けないのに、それがピークを越えてしまうと、なんだか麻痺して笑えてくる。
ゲラゲラゲラゲラ下品な声で、そんなアタシを見て眉間のシワを深くするジャッキーがおかしくてたまらない。
そうか、こういう楽しいキモチだけを残して、後は捨ててしまえばいいんだな。
傷付いたキモチ、悲しかったキモチ、報われないキモチ、そんなのまとめて捨てちゃえ捨てちゃえ。
分かってる、マジョリカにはかないませんよ、元ヤンは元ヤンらしく身の程知れって話だよ。
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