第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「悲しむのも欲するのも疲れた……もう二度と誰も好きにならない……! そんなクソッタレな感情から解放されたい! もうウンザリだッ! あと3日、訓練は最後まで付き合うよ。だけど明々後日(しあさって)からはアンタのコトは忘れる、キライになる、オシマイだ! マジョリカと幸せにな、早く死ねるといいね! あはははははは!!」 叫びながら笑ってた。 アタシは自分に酔ってるみたいなカッコ悪さだし、ジャッキーは狼狽えてるし。 二人が滑稽でおかしくてたまらなかった。 ココロは完全にバグってて、あはは、たまにこういうのがあるんだよ。 久し振りに出ちゃったな、アタシはさ、みんなが言うほど強くない。 好きの感情はドロドロで、だけど二年もネチネチ想い続けたこの気持ちを捨てるなら、このくらいの不具合が出ても仕方がないと思うんだ。 訓練期間の3カ月はあと3日で終わる。 終わったらアタシは用無し、アパートに帰るんだ。 そしたらまた仲間と夜通し飲んで、その足で寝ないで仕事に行って、なるべく独りのアパートに帰らないようにするんだ。 「淋しくないよ、ジャッキーがいなくてもやっていける。どうしても淋しくなったら仲間の誰かと付き合えばいいんだ。きっとアンタと違って拒まない。アタシは感情から、アンタはアタシからやっと解放されるんだ、おめでとう!」 あはは、なんだかめちゃくちゃハイテンション。 そのせいなのかジャッキーがヘンな目でアタシを見てる、眉間のシワは解かれないまま、あれ? どうした? 泣いてるの? なにがあったか知らないけど……ま、頑張れ。 アタシの両手を解放したジャッキーは、ギシッと軋んだ音をさせ、無駄に広いベッドに上がってきた。 眉間のシワは更に深く刻まれて、泣き顔を隠そうともせずにアタシを抱き上ると、フカフカなスプリングの真ん中にそっと置きなおした。 そして義足の膝でアタシを跨ぎ、上からじっと見つめてる。 まさかアタシを抱くつもりなの? たった今、アンタをキライになるって言ったアタシを? 意味が分からない……あ、 「……ああ、そうか、惜しくなったのか。いらないと思ってた都合のいい女が、生意気にもいなくなりそうで、最後に1回抱いとこうって思ったのか。いいよ、好きにしなよ。考えるのがめんどうだ」 「弥生、」 わぁ、気が早い。 もうしがみついてきた。 アタシに乗っかるジャッキーの体重が心地いい。 だけど耳にうるさい嗚咽が気になる。 なに? メンドクサいよ。
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