第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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アパートの解約手続きって1カ月前には言わなくちゃダメだよね、なんて。 すぐに夢見るアタシはバカなんだろうな。 ワザとなのかそうでないのかは知らないけど、コイツはアタシの気持ちを解放してくれない。 死ぬ気で鎮火しようとしても、横から燃料をぶちまけるんだ。 いつかの逆で、アタシを組み敷いたまま真剣な顔で怒ってる。 タチが悪いわ、アタシが諦めきれないのはアンタのせいでもあるんだよ、クソッタレ。 「ふざけんな、出て行くよ。アタシは自由が好きなんだから好きにさせろ。彼氏でもない男に縛られるなんて納得でき……ああ、違うな。アンタは女の気持ちに疎いんだった。遠回しに言っても通じない、」 このままコイツと住めたら幸せだけど、同時に地獄が待っている。 「ハッキリ言うよ。アンタの事はこの先一生嫌いになれない、たぶんこのままずっと好きだ。だから一緒には住まないよ。だってさ、アンタがマジョリカの話をしただけでさっきみたいなバグを起こすんだ。嫉妬でアタマがおかしくなる。今ならまだ口だけだ。アンタ以外と付き合うなんて死んだ方がマシだ。けどさ、一緒に住んで、夜中にマジョリカとお喋りしてるのが聞こえてきたら……自信がないよ」 あはは、言っちゃった。 カッコ悪。 未練タラタラ、一生好きとか重たすぎ。 引いたかな? 引くよな。 思ったコトをなんでも口に出すの直したいなぁ。 「……おまえさ、一生って重いな」 ああ、やっぱりか……だよねぇ。 自覚があるから責めないでくれ。 「キャラじゃないよ。会社のみんなが知ったら引く」 「仕方ないだろ、だってアタシはバカなんだ。複雑なコトは苦手だし」 「付き合い長いし、バカなのは知ってるけどさ……はぁ、もう重くてもいいや。一生嫌いになれないなら一生好きでいろよ」 「……だよな……ん? アンタなに言ってんだ?」 「そのまんまだ。だけど自分は既婚者で、妻しか愛せないのは変えようがないから、弥生の気持ちには応えられないけど」 「はぁぁぁぁ!? なにそれ!?」 アタシの上でシレっと言うけど、矛盾だらけだ。 なんだオマエは真性のロクデナシか? 言い分を聞いてみると、 「仕方ないだろ。弥生は気持ちの切り替えが出来ない。辛いのを紛らすのに、好きでもない男と付き合う可能性があるなら、いっそ自分だけ見てろ、一生好きでいろ」 そう言ってアタシの上からどいたジャッキーは、ごろんと隣に寝転んだ。 「………………アンタ、すごいな。どんだけウエメセなんだよ。つーか自分がナニ言ってるのか分かってんのか? 明らかに矛盾度が上がってるぞ? 妻しか愛せないけど一生好きでいろって、どんだけ偉そうなんだよ、どんだけ自分勝手なんだよ、アンタが霊なら確実に滅してる、良かったなぁ生者で……」 …… …………コイツ、おかしいよ、 頭が完全バグってる、 バグりすぎてて、 突き抜けすぎてて、 なんだかもう笑えてくる、 なんかだかもう……力が抜ける、
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