第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「さぁ、明日も訓練だからもう寝るぞ。今夜は特別だ、このまま一緒に眠ろう。あ、言っておくが一線は越えないからな」 やたらに大きなこのベッドはおそらくダブルだ。 この広さなら、いくら180cmの巨体が一緒でも余裕で眠れる。 幸い枕は一つだ、アタシの分が足りないから当然腕枕だと思ったのに。 ジャッキーは枕を寄越すとゴロリと身体を横に転がし、アタシとは反対側の端っこに移動した。 あーそーきたかー、まったく予想してなかったワケじゃないけど、真面目な男ってメンドクサイ、つーか空気読め、アタシに恥かかすな。 「ジャッキー? なにこの距離感。一緒に眠れるのは嬉しいけど離れすぎ。もっとコッチに来てよ。それからさ、この状況で一線越えないって冗談だろ? 健康な、若い、男女が、深夜に、同じ、ベッドにいて、しかも女の方は男にベタ惚れだ。勇気出せ、ダイジョブだ、越えろよ」 「越えませんよ。いいから早く寝ろ」 「だーーーーっ! どんだけ真面目だよっ! だったらなんの為にアタシを2階に連れてきたんだ? 少しはそんな気があったんじゃないのかよ?」 「いや、そんなつもりは一切無いぞ。ただ……1階(した)にいた時から様子がおかしくて、あのまま置いていったら、弥生が死んじゃうんじゃないかと思ったんだ。心配で放っとけなかった。だから連れてきた」 「あ……そうか……ごめん、気持ちが落ちてたからな。確かにちょっと考えてたよ、マジョリカに直で喧嘩売りに逝こうかなぁって」 「いろんな意味で止めてくれ。さあ、本当にお喋りは終わりだ、寝るぞ」 「うん、そだな。……なあジャッキー、寝る前にキスしていいか?」 「駄目だ」 「なんで! さすがにこの流れなら、キスくらいするだろ!」 「しない。なぜなら自分は、」 「「既婚者だから、」」 「………………」 「……ぷっ」 「おまえ……元気だな。1階(した)で寝ろ」 「いやです」 「……」 「…」 …… ………… ……………………イライライライライライラ 「いいよバカ! アタシがそっちに行く!」 「バカは弥生だっ! 来るなっ!」 結局、頑なジャッキーに拒否られて、一線を越えるのはもちろん、腕枕で寝るコトさえ許されなかった。 妥協案として距離は取ったまま小指だけ繋いで眠りについた。
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