2366人が本棚に入れています
本棚に追加
「さぁ、明日も訓練だからもう寝るぞ。今夜は特別だ、このまま一緒に眠ろう。あ、言っておくが一線は越えないからな」
やたらに大きなこのベッドはおそらくダブルだ。
この広さなら、いくら180cmの巨体が一緒でも余裕で眠れる。
幸い枕は一つだ、アタシの分が足りないから当然腕枕だと思ったのに。
ジャッキーは枕を寄越すとゴロリと身体を横に転がし、アタシとは反対側の端っこに移動した。
あーそーきたかー、まったく予想してなかったワケじゃないけど、真面目な男ってメンドクサイ、つーか空気読め、アタシに恥かかすな。
「ジャッキー? なにこの距離感。一緒に眠れるのは嬉しいけど離れすぎ。もっとコッチに来てよ。それからさ、この状況で一線越えないって冗談だろ? 健康な、若い、男女が、深夜に、同じ、ベッドにいて、しかも女の方は男にベタ惚れだ。勇気出せ、ダイジョブだ、越えろよ」
「越えませんよ。いいから早く寝ろ」
「だーーーーっ! どんだけ真面目だよっ! だったらなんの為にアタシを2階に連れてきたんだ? 少しはそんな気があったんじゃないのかよ?」
「いや、そんなつもりは一切無いぞ。ただ……1階にいた時から様子がおかしくて、あのまま置いていったら、弥生が死んじゃうんじゃないかと思ったんだ。心配で放っとけなかった。だから連れてきた」
「あ……そうか……ごめん、気持ちが落ちてたからな。確かにちょっと考えてたよ、マジョリカに直で喧嘩売りに逝こうかなぁって」
「いろんな意味で止めてくれ。さあ、本当にお喋りは終わりだ、寝るぞ」
「うん、そだな。……なあジャッキー、寝る前にキスしていいか?」
「駄目だ」
「なんで! さすがにこの流れなら、キスくらいするだろ!」
「しない。なぜなら自分は、」
「「既婚者だから、」」
「………………」
「……ぷっ」
「おまえ……元気だな。1階で寝ろ」
「いやです」
「……」
「…」
……
…………
……………………イライライライライライラ
「いいよバカ! アタシがそっちに行く!」
「バカは弥生だっ! 来るなっ!」
結局、頑なジャッキーに拒否られて、一線を越えるのはもちろん、腕枕で寝るコトさえ許されなかった。
妥協案として距離は取ったまま小指だけ繋いで眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!