第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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ここまで赤裸々に語ってくれた弥生さんに、もはやいろいろ質問するコトへのハードルは下がっていた。 僕は気になっているコトを聞いてみる。 「ジャッキーさんは、その、弥生さんに、”ずっと覚えてろ” そう言ったコトについてなんて言ってたんですか?」 「あー、あれな。あのあとヤツは夕方に起きてきて、アタシが作ったゴハン食べてテレビ見てビール飲んで『初めて訓練さぼっちゃったねー』なぁんて話してオシマイだよ。何も言ってこなかった。アタシも聞かなかったしね」 「なんで聞かなかったんです? 気にならなかったんですか?」 「んー、気にはなったけどさ。もしかしたら寝惚けてたのかもしれないし、下手に聞いて『そんな事言ったか?』って言われるのが怖かったんだ。だったら聞かないでアタシの中で宝物にしようと思ったの」 宝物か……弥生さんにとって、ジャッキーさんの言葉ひとつも愛しくて大事なモノなんだ。 僕に今、好きな女性(ひと)はいないけど、こんなに好きだと想える恋に出逢えるコトはできるのかな。 弥生さんは”好き”の分だけたくさん泣いたと思うけど、少し羨ましくもある。 7年間で30回も告白するくらい好きなんだもの……ん? これって正確に言うと違うんじゃないの? 「ねぇ弥生さん、さっき僕に7年間で30回告白したって、根性ある発言してましたけど、正確には最初の2年で1回、残り5年間で29回告白したってコトですよね? 29÷5で、えっと……年間5.8回だから約6回。てことは1年で言うと……2カ月に1回告白してる計算になりますけど合ってます?」 すごいハイペースだな。 まぁ定期的にキッカリ2カ月に1回じゃないだろうけど、1年に6回ペースってだけでもスゴイだろ。 「んーどうだったかな。多い時だと一週間連続で告って、しばらくしないとかもあったし」 「一週間連続って……それもう告白強化週間ですよね」 「その言い方、なんかカッコいいな!」 「や、ちょ、カッコいいとか、ソレ違うと思うよ?」 「あ、エイミーちゃんがタメ口きいた!」 「え!? あっ! すいません、うっかり! だって弥生さんヘンなコト言うからぁ」 イカン……スキルもキャリアも大先輩に対して失礼なコトを言ってしまった。 指摘されて気が付いて反省中の僕に、弥生さんはケラケラ笑いながらこう言った。 「いいんだよ、アタシもタメ口の方が気楽だ。同じ霊媒師同士、フランクに仲良くやろうや。この仕事はさ、ツーマンセル、スリーマンセルで組む事だってある。普段からコミュニケーション取っているのといないのでは、現場で大きな差が出るんだ。苦戦しても、コイツならこう動くって読めるヤツと組むのは楽だからな。だからクソ水渦(みうず)とは絶ぇぇぇっ対に組まない!」
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