第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ 「「いただきまーす!」」 二人で手を合わせ、夕食の始まりだ。 リクエストメニューのフルコンプ、ビーフシチューにキッシュにサラダ。 パンだけは買ってきたものでゴメンだけど、シチューもキッシュも一口食べればほぼほぼ再現出来てるぞ! 僕、頑張った! 自画自賛で拳を握りつつ、弥生さんの反応を見ると、 「……ああ……ああ……美味い……美味すぎる!」 とまぁ、喜びに震えるオジサンのような反応だ。 ヨシッ! 「エイミーちゃんアリガト! すごい美味しいよぉ……特売の肉がこんなにもホロホロで口の中でとろけてるぅ。ゴロゴロ野菜も中までホクホク、もうね、朝昼晩で3日は食べたい!」 口の横にシチューをつけて子供のように喜ぶ弥生さんは、年上だけどなんだか妹のようだった。 ジャッキーさんが”弥生は妹”と言ったのも、実はこういう所を見たからってものあるのんじゃないか? これは絶対”姉”じゃあないよ。 埼玉の現場で見せた頼れる姐御のイメージが、良い意味で崩れていく。 ま、今はプライベートの時間だし、これが弥生さんの素に近いんだろうな。 とりあえず僕は、ティッシュを一枚差し出した。 「ん?」と不思議がる弥生さんに、「口の横」とだけ答えると慌てたように拭きだした。 二人でゴハンを食べながら色んなコトを話したけれど、話題はやっぱりジャッキーさんのコトになった。 「ジャッキーさんって、僕らと話す時と弥生さんと話す時じゃ、口調が全然違うよね(モグモグ)」 「だなぁ。アタシにはフランクだけど、ジャッキーは元スタントマンの体育会系だからさ、基本礼儀正しいんだ。年下のエイミーちゃんや誠、クソ水渦(みうず)にも”さん付け”だろ? キーマンだけはキャラが濃すぎて”キーマン”呼びだけど(モグモグゴクゴク)」 「あーキーマンさんはねぇ、独特のキャラだからねぇ。僕なんか『ヘーイ! チェリーボーイ!』って呼ばれるんだよ? あ、違うからね? 言っとくけどさすがに違うからね?(モグモグ)」 「あはははははははははは! ”チェリーボーイ”って、外じゃ絶対呼ばれたくないわ(ゴクゴク)」 「でっしょー。最初は”チェリーパイ!”だったんだけど、色々混ざって最終形態が”チェリーボーイ”になったんだ(オチャゴクゴク)」 「どんな進化でそうなるんだか。ま、キーマンだからな、しょうがないよ。エイミーちゃん、諦めろ(モグモグ)」 「ウン……諦める。んでさ、ジャッキーさんって弥生さんと話す時は男っぽいよね。『離さないよ、動けないようにしてるんだ』とか言っちゃって、キャーーー!」 「あれなーーー! 実は今日すっごいドキドキしたーーー!」 「ちょいちょいちょい、なに思い出しちゃってるの! てか、ちょっとジェラシー……だってジャッキーさんって、弥生さんの前では素って感じだもの(モグモグ)。”弥生”とか”おまえ”とか言っちゃうしぃ(ゴクゴク)。あ、僕も今度”エイミー”って呼び捨てにしてもらおっと」 「おぅおぅ、してもらえ!」
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