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「それから少しして、真剣に相談したの。アナタの子供が欲しいですって。でも聞いてくれなかった。無茶言うなって怒られた。それを最後にゴハンも一緒に行かなくなった。それでも電話は出てくれるんだ。アタシが何か困ってるんじゃないかってね。同じ頃……去年の夏にさ、ちょっとトラブって、あの時アイツに電話なんか出来る状況じゃなかったのに、もう駄目だって思ったのに、アイツは来て助けてくれたんだ……優しさ過剰は変わらず……余計に欲しくなっちゃうよ」
トラブった?
何があったのと聞こうとしたけど、話の続きに言葉を飲んだ。
「アタシの誕生日が過ぎて38になって焦ったんだ。それで先月、アイツの家に行って頭下げて今までにないくらい真面目にお願いしたの。……その、マジョリカ以外抱けないなら、そういう事をしなくてもいい、他にも方法はあるからって。でもダメだった。うんとは言ってくれなかった。それからね、完全に態度が変わった。他人みたいになっちゃった。昼間、アタシ達が話してるの聞いただろ? ああやって頑なに拒むんだよ」
力なく俯いて、サラダをつつく弥生さんは、しょんぼりとしていた。
だけどジャッキーさんも簡単にうんとは言えないよなぁ。
だって子供だよ?
命も未来もあるんだよ?
ジャッキーさんの性格上、いくら弥生さんが良いと言っても、子供だけ作って後は知りませんとは出来ないだろう。
それに……心の中では子供が欲しいと思っているんだ、自分と血を分けた子供を見たら、そりゃあ可愛いだろうし関わりたくもなるんじゃないかな。
ジャッキーさんは既婚者だけど、奥様は死者であり黄泉の国の住人だ。
常人に姿も声も聞こえないし、現世でそれは理解してもらえない。
当然、ジャッキーさんのご家族も、弥生さんのご家族も、子供が出来て独身同士なら結婚して然りと思うだろうし、どうして結婚しないんだと詰め寄られてしまうだろう。
そして一番考えなければいけないのは奥様の気持ちだ。
自分の旦那さんが、他所の女性にそんな事を願われていると知ったら、傷付くし怒りも沸くだろうし。
子供が欲しい……弥生さんの気持ちは分からないではないけど、問題が山積みで実現はすこぶる難しい。
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