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「弥生さん、こんなコト聞くのは酷かもしれないんだけど……もし、ジャッキーさんがどうしてもダメだって言ったらどうするの?」
だいぶお腹もいっぱいで、食後にシンプルなグリーンティーを淹れながら聞いてみる。
少ししたら、デザートのヨーグルトを持ってこよう。
無糖のビックサイズを二つ買ってある。
別売りソースはラズベリーとキウイを二人で選んだ。
「ん……どうしようしようもないよね。だって一人じゃ子供は作れない。諦めるしかないよ。あーーーもう、いっその事、」
「いっその事?」
「口寄せして、先にマジョリカを説得しようかなぁ」
えっ!?
この人ナニ言っちゃってんの!?
危うく、お茶を毒霧するトコだったよ!
てか、えぇ?
「あのー、弥生さん? 話がブッ飛びすぎて意味が分かんないんだけどさ、なんで奥様口寄せするの? 説得する? なにを? ジャッキーさんの子供がほしいんですって? 冗談でしょ? え? 本気?」
僕は相当マヌケな顔をしてたんだと思う。
弥生さんは僕を見て「落ち着けよ」と言った。
いや、アナタが落ち着け。
「結構本気。だってもう手が無い」
「や……この人、地雷物件だわ」
「オイ、地雷って言うな」
無理、だって地雷以外の何物でもないもん。
「あのさ、あり得ないから。奥様に『迷惑かけません! 子供が欲しいだけ! 許可クダサーイ!』って言って(弥生さんの事だからこんな言い方だろうと予想)『オッケー! ノープロブレム!』って言ってくれると思う?」
んーと10秒考えた弥生さんは、
「交渉次第?」
と答える。
駄目だ、この人。
地雷物件兼ポジティブモンスターだわ。
「交渉以前の問題だよ。決裂不可避」
「マジで? アタシ、本気でぶつかれば結構イケルと思ってんだけど」
なにその自信。
マジでポジティブモンスター、これは現実を突きつけないとダメなヤツだ。
「残念なお知らせですが、無理です! 駄目です! 常識です! てか弥生さん、バカなの? ねぇ、バカでしょ。あ、ヤベ、言っちゃった」
「エイミーちゃんまでバカって言うな! ……って、やっぱ駄目か。
まぁ、そうだよなぁ。ただね、もしジャッキーがいいよって言ってくれたとして、その時はマジョリカにも話そうと、元々思ってたんだ」
「だからさぁ……なんで波風どころか、嵐を起こそうとしちゃうの? もしジャッキーさんがOK言ってくれても、わざわざ奥様に話したら駄目になるに決まってる。ジャッキーさんもガチギレするよ」
呆れてしまう。
たわいない話をしてる時の回転の速さ、切り返しの絶妙さ、そういったのがウソのように思える。
ガチ馬鹿正直な子供のようだ。
「ん……でもさ、内緒で子供作っても後から絶対バレちゃうよ。先代に聞いたコトがあるんだ。人は死ぬと黄泉に逝くか地獄に逝くかジャッジされる。生前どう生きてきたか全てを視られて丸裸にされるんだ。隠し事は何も出来ない。子供を作って内緒にしても、後でマジョリカに知れた時はジャッキーが責められる。言わずにバレるのと自分から言うのでは違うしさ。だからアタシが無理を言ったんだって、むしろジャッキーは被害者だって、それは言っておかないと」
ああそうか……そういう事ね。
弥生さんはジャッキーさんの立場を守ろうとしてるのか。
「時間がないってもの切実だ。アタシは38で急がないと間に合わない。いや、そりゃあさ、今はもっと年齢が上でも大丈夫って言われてるけどさ、アタシの場合……長年大酒飲みまくってきたし、それに親は頼れないからさ。産めたとしても、一人でなんとかしなくちゃいけない。そうなると産んだ後の体力も計算にいれなくちゃいけないからね」
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