第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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男の僕が部屋にいて、ガチギレしていたジャッキーさんだったが、傷の手当ての最中に「エイミーちゃんは男であって男でない。乙女なんだよっ!」という弥生さんのハンパない力説に(そこまで信用してくれて嬉しいけど乙女って……)、なんとか納得してくれたジャッキーさんは落ち着きを取り戻してくれた。 弥生さんの部屋で三人でお茶を頂く。 なんだか変な感じだなと思いつつも、居心地は悪くない。 どちらかというと居心地の悪さをジャッキーさんが感じているようで、その理由が…… 「エイミーさんにぜんぶ話しちゃったのか」 ジャッキーさんの隣に座る弥生さんに、アチャーな顔でこう聞くと、 「うん、ぜーんぶ話しちゃった。大丈夫だよ、エイミーちゃんは誰にも言ったりしない。だろ?」 コクコクコクと頷く僕をチラリと見たジャッキーさんは、「いや……参ったな……ぜんぶ……そう、ぜんぶなの……」と独り言ち、ゴツゴツの手で顔を隠してしまった。 顔は隠れているものの耳が赤くなってるジャッキーさんに、「僕にもチューシテクダサイ!」とはさすがに言えず、弥生さんと顔を見合わせた。 「ジャッキー、話しちゃダメだったか? ごめん。なんかさ、エイミーちゃんって聞き上手というか……アタシの事心配してくれてさ、二人の会話も聞かれちゃったし、少しは事情を話さないといけないなと思ってチョットだけ話すつもりだったんだ。だけど、話しやすいというかなんというか……気が付いたらぜーんぶ話し終わってたの」 肩をすくめて僕を見る弥生さん。 唸っていたジャッキーさんは、ようやく再起動がかかった。 「いや、いいさ。もしかしたら話すかなとは思ってた」 僕の淹れたグリーンティーをグイっと飲んだジャッキーさんは「自分と弥生とエイミーさんの秘密にして、」と片目をつむる。 「なんで話すと思ったんだよ。いつもならアタシの口は軽くないぞ? 知ってんだろう? アタシ、ウチの会社の連中の秘密いっぱい知ってるけど漏らしたコトはないからな」 え? なにそれ、みんなの秘密とかスゴイ気になっちゃうんですが。 「分かってる、弥生はお喋りな女じゃないよ。自分が言ったのはそういう意味じゃない。エイミーさんが入社してすぐの頃、先代に聞いた事があるんだ。今度の新人さんはどんな感じですか? って。その時に聞いたのが……」
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