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「だけどね、エイミーさんの気持ちが分からない。エイミーさんは弥生が好きなの? それとも同情だけで弥生の傍にいようとしてるの? 同情だけならいただけない。同情で一時弥生の傍にいて、気が済んだら離れてしまう可能性だってある。駄目だな、愛情のない男に弥生を任す事はできないよ」
目が……また殺し屋だ。
神奈川の現場……勤務中に二回も寝落ちした僕と水渦さんに怒る事もなく、“おはよう”と言ってくれたジャッキーさんは、弥生さんの事となると人が変わる。
怒りを露にしている。
弥生さんはどうしていいか分からないといった表情だ。
僕は今、どんな顔をしてるんだろう?
弥生さんが傷付いて独りで泣くのかと思うと、単純に傍にいてあげたいと思う。
だけど、それが恋愛感情かと聞かれれば分からない、ジャッキーさんの言う通り同情……? なのかな。
どうもそれとも違う気がするけど。
「……ここで僕が、弥生さんが好きですと言えればいいんだけど、正直よく分かりません。ただ、近い未来に限界を迎えた弥生さんが、独りで歯を食い縛って泣くのかと思うと、やだなぁって」
さすがに弥生さんが奥様を口寄せしようとしている事は言えないので曖昧に濁す。
「ハッキリしない言い回しだな。気に入らないよ」
ハッキリしないのはジャッキーさんの弥生さんへの態度だ。
たぶんきっと好きなクセに好きじゃない振りしてる。
既婚者だから仕方がないけど、むしろ奥様がいるのに遊びで弥生さんを傷付けるよりはいいのかもしれないけど。
その優しさが傷付ける事もあるんだよなぁ。
「すみません。ハッキリか……そうだな、たとえばだけど、いつかそのうち弥生さんとキスでもすれば、僕なんて一発で好きになっちゃいますよ。なんたって今まで付き合った女の子も片手だし、免疫も少ないし……って、ナニ言ってんだ。や、今のは忘れてください」
「キミは何を言ってるんだ。弥生がそんなコト許すはずないだろう、」
ごもっとも。
恥ずかしいコトを言ってしまった。
てか、僕はなんでこんなコト言ってるんだろう?
大好きなジャッキーさんを怒らせる必要ある?
ん……きっと弥生さんの話をいっぱい聞いて、肩入れしたくなっちゃったんだろうなぁ。
それは突然だった。
ジャッキーさんの隣に座る弥生さんが、何を血迷ったのか「エイミーちゃん、ありがとう」と言いながらテーブルの上に片膝をつき身を乗り出した。
行儀が悪いですよと思った次の瞬間、僕との距離が一気に縮み、気が付けば柔らかそうな唇が目の前にあった。
ウソだろ……!?
心臓は少なくとも10回爆発した。
正直この段階で弥生さんと結婚しようと決心してた……が、年上のお姫様はすんでの所で羽交い絞めで引き戻された。
「ジャッキー! ジャマすんな!」
華奢な上半身がガッチリホールドされた弥生さんは、足をバタバタさせながら「離せ! 離せ!」と暴れてる。
呆れ顔のジャッキーさんは「離さないよ、動けないようにしてるんだ」と昼間に聞いたコトを言う。
置いてきぼりの僕は……とりあえず、ヨーグルトを一口食べた。
ん、キウイのゾーンだ。
甘酸っぱい……やだ……僕、恋に落ちちゃった?
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