第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

75/222
前へ
/2550ページ
次へ
「せっかくエイミーちゃんが、アタシと付き合ってくれるって言ったのに!」 プリプリ怒る弥生さんのノリは軽い。 ちょ、それ、どこまで本気なの? 僕、自分を見くびってた。 チューでもすれば好きになると思ってたけど、たったあれだけのコトで(チューしてないし)結婚したくなるなんて。 弥生さん……本気でキスするつもりだったのかなぁ? いや……ないよなぁ。 恋愛感情を否定しまくるジャッキーさんに、ヤキモチを焼かせたかっただけだろうなぁ。 たまたまいたのが僕だったってだけだよなぁ。 僕は死にそうになったというのに。 ある意味殺人未遂だ、責任取って僕と結婚してください。 「いいか、弥生。エイミーさんはね、た だ の 会社の先輩を心配してるだけで、本 気 で 付 き 合 う 気 は な い ん だ よ。さっきのはモノのたとえだ。ね、エイミーさん。そうだよね? ないよね? 違うよね? ん?」 や……言い方。 絶対に付き合わせねぇぞ! 的な空気をガンガン感じるんですが。 「あーうん、そうですねぇ。心配はしてますよ。付き合う気があるかないかで言えば……そこすっ飛ばして結婚したいです」 あ、うっかり本心を言ってしまった。 弥生さんも、ハッキリしない既婚者に振り回されるより、明日僕と入籍した方がいいと思うんだ。 「いや、すまない。自分は既婚者でエイミーさんとは結婚出来ないんだ。諦めてくれ」 ジャッキーさんが真面目な顔で僕に言う。 オイ強引だな、その持っていき方は無理があるぞ。 どうしよう。 意識しちゃうんだけど。 僕の中の弥生さんは数段階の変化を遂げて、その詳細は…… 会社の先輩→頼りになる姐御肌→妹っぽい女友達?→チュー未遂!→結婚してください!(New!!今ココ!) だけど……チラリと年上のお姫様を見れば、ジャッキーさんの肩やら胸やらバシバシと叩き、「新しい恋のジャマすんな!」とじゃれている。 ジャッキーさんを見上げる目はキラキラと輝いて、新しい恋する気ないよねぇ? と突っ込みたくなる。 まぁ……いっか。 とりあえず、弥生さんが笑ってる。 今はそれでよしとしよう。 弥生さんのブッ飛び奇行で、張りつめていた空気が、なんやかんやで元に戻った。 もしかして……これは計算だったのか? 真意は分からない。 ただ3人で飲むお茶はおいしくて、今夜はこのまま平和におわるかなぁと思っていたんだ。 だけど、思ったコトをぜんぶ口に出さないと気が済まない、弥生さんの爆弾発言で事態は激変する事になるのだ。 それが…… 「エイミーちゃんがいると場が和むよ。今なら……もう一回話せるかなぁ。 なぁ、ジャッキー……先月の話なんだけど、」 言いかけた弥生さんにジャッキーさんは、 「エイミーさんがいるだろう? 今話す事じゃないよ」 と取り合わない。 途端、弥生さんはしょんぼりと肩を落とす。 見てられない、やっぱり僕と(ry はぁ……子供かよってくらい俯いちゃって。 少しだけフォローしとくか。 「ジャッキーさん、僕のコトは気にしないでください。むしろ第三者がいる時に話した方が良い時もあります。二人だけで話すには……もしかして感情的になってしまうかもしれません」 「どういう意味だ?」 ジャッキーさんが片眉をしかめて僕を見る。 僕の援護射撃に勇気を出した弥生さんが斬り込んだ。 予想ではもう一度子供が欲しい気持ちを話し、口寄せの件はデリケートだし慎重にいくのかと思っていたのに。 「アタシ、どうしてもジャッキーの子供が欲しいんだ。だからマジョリカを口寄せする、マジョリカが良いと言ったらいいだろう?」 切り出し方は最悪だった。 弥生さんの言いたい事は、これで間違いないはないし、今夜はこれがすべてなのだろう。 だけど、空気が一変したんだ。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加