第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「マジョリカを呼ぶ……? ふざけた事を言うなよ、……これはエイミーさんの入れ知恵なのか?」 淡々とはしているが口調は強い。 ジャッキーさんが怒ってる。 ピリついた空気が肌をヒリヒリさせる。 すごいな……僕が怒ったって、こんな風に空気を変える事は出来ないよ。 「違う、それはアタシが、」 言いかけた弥生さんの言葉を大きな声で遮った。 「そうです、僕です」 咄嗟の嘘だった。 口寄せは僕が言い出した事ではないけれど、矛先を逸らしたかった。 このヒリつく怒りを弥生さんに向けさせたくない、僕のせいにしたかったんだ。 部屋の中がシンと静まり、ジャッキーさんは僕と弥生さんを交互に見る。 やがて大きな身体は完全に僕に向いた。 目は捕食者のように鋭く光り、あからさまな怒りの色を見せている。 「はぁ……言い出したのは弥生か。エイミーさんはどうして嘘を? もしかして弥生を庇っているつもりかい? ありがたい話だね、心配してるんだ。それなら二人、本当に付き合ったらいい。いや、結婚したいんだっけ? 祝福するよ」 人ってこんなに冷たい顔が出来るのか、というのを見せ付けられた気がした。 水渦(みうず)さんと3人で打ち上げをした時に見せた優しい顔、一緒にゲームをして大笑いした顔、同じ人とは思えない。 堪えきれなくなったのか、弥生さんが泣き出した。 「ごめんなさい、ごめんなさい、」と顔を覆って震えてる。 ____オイ、ふざけんなよ、誠ぉ!! ____クソ水渦(みうず)とは絶ぇぇぇぇっ対に組まない!! ____先代大好き! 芋饅頭買ってきたよ!! ____エイミーちゃん、ありがとう。 明るくてキレやすくて懐こくて、僕にキスをしようとした弥生さん。 愛されて然りの優しい女性(ひと)が泣いている。 震えながら謝っている。 「妻を、マジョリカを巻き込まないでくれ。妻は純粋なんだ。自分をずっと待っていてくれてる。いらない心配をかけたくない」 抑揚のない声でそう言うと、立ち上がり部屋を出ていこうとする。 このまま帰るつもりなのだろうか。 泣いて震えて許しを請う弥生さんに声を掛けるでもなく、僕がどうして弥生さんを庇ったのかちゃんと聞こうともせず。 ねぇ、ジャッキーさん。 弥生さんだって純粋ですよ?  アナタをずっと待ってますよ? いつだって不安ですよ? それなのに。
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