第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「いい加減にして! 言ってる事がメチャクチャだよ! アンタはアタシの事そんな目で見てたんだね! もういいよ! どっちにしたってアタシ達は二度と会わないんだから。本当の他人になるんだもの、どうでもいいわ。アタシが尻軽だろうが、なんだろうがアンタには関係ない! もう出ていって!」 「出ていけ? 自分がいなくなったらエイミーさんと二人になれるから? だから追い出したいのか?」 「ジャッキー! 今のはエイミーちゃんに失礼だよ! ……なんなの? ……アンタおかしいよ。……もうやだ! ワケわかんない! 話も聞かずに帰ろうとしたのはアンタが先じゃない! いいよ、帰りたいんでしょ? 帰んなよ! ホラ、早く! 今のアンタ大っ嫌い!」 「大っ嫌い? おまえが? 自分を?」 「そうだよ!! ずっとアンタしか好きじゃないのに尻軽扱いする! 大っ嫌い! 大っ嫌い! 大っ嫌い!! もういい! アンタの望み通りにしてやるから! 手ぇ離してっ! 早く出てって! アンタがいなくなったらエイミーちゃんと寝るんだよ!! 抱き合うんだよ!! それで満足!?」 「ふざけるなっ! バカかよっ!! だったら自分のこの手で傷付ける方がよっぽどマシだ!! なぁ、弥生。おまえ子供が欲しいって言ったよな? 望み叶えてやるよ!!」 「やだっ!! やめてよっ!! バカはアンタだっ!! 痛いよっ!! 手ぇ離して!!」 これは駄目だ。 ジャッキーさんこそバグってる。 嫌がる弥生さんの手を力任せに掴み、僕に出ていけと凄んでる。 なんなんだ、この人は。 大人でもなんでもないよ。 こんなになるまで拗らせて。 「ジャッキーさん、いい加減にしてください! 落ち着いてください!」 必死だった。 弥生さんとジャッキーさんの間に割り入り、引き離そうとした……が。 「口出ししないでくれ! キミに弥生は無理だ! 帰ってくれ!」 僕に帰れと吠えるジャッキーさんに、弥生さんも吠えた。 「だからっ! アンタって昔からそうだよね! 好きでもないのに束縛だけはするんだ、そういうの良くないよ!」 「ああっ! 束縛だけはするんだよ! 束縛しか出来ないんだよ! それ以外何が出来る!」 「はぁぁ? 意味分かんない! アンタってさ、外ヅラは良いけどアタシには自分勝手でウンザリだ! 束縛して、優しさ過剰で、アタシを絶対に拒むクセに解放はしてくれない! アタシには何したってイイと思ってる? そうでないなら本当はアタシのコト好きなんじゃないの!?」 「ああそうだ!! 好きだよ!! じゃなきゃ、おまえみたいなメンドクサイ女、誰が一緒にいるかよ!!」 暴走しすぎのジャッキーさんは自身が発した言葉に絶句した。 弥生さんもだ。 霊媒師のクセに、まるで幽霊でも視たかのように動けないでいたのだ。
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