第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

80/222
前へ
/2550ページ
次へ
~~嘘は経年劣化した・弥生視点~~ 今なんて言った……? アタシの聞き間違いか……? 耳の奥がズキズキする。 こんな所が痛むのはいつぶりだろう? ジャッキーが黙り込んでいる。 エイミーちゃんが何か言ってる。 声が響いて良く聞こえない。 何を言ってるの……? ……さん、いさん、……じょうぶ? 「弥生さん! 大丈夫? って大丈夫そうじゃないな……ホラ、お茶飲んで。ジャッキーさんは……ああ、はい。思いっきり言っちゃってましたよ、」 この中で一番冷静なエイミーちゃんが、アタシの手首を握り続けるゴツイ手を慎重に外してくれた。 解放された手首を見れば、薄っすらと力の跡が残っている。 「……はぁ、ジャッキーさん、だいぶ落ち着いたみたいですね。僕、今日は帰ります、明日も仕事だし。あとは二人で話してください。 ……だからっ! ”話す事は無い”じゃないですよ。好きなんでしょう? 事情も葛藤もあるんでしょう? 知ってますから! だけどね何も無かったコトには出来ないですよ、ちゃんと説明してあげてください。……弥生さん、本当に悩んでるんですよ……って……すみません。そんなの僕よりジャッキーさんの方が知ってますよね」 ドアの閉まる音がして急に静かになった。 玄関でエイミーちゃんを見送ったジャッキーが、部屋の中に戻ってくる。 テーブルの上には食べ残したヨーグルト、エイミーちゃんが淹れてくれたお茶はもうすっかり冷めていた。 ジャッキーはアタシから少し離れた場所に座り、半分背中を向けている。 こっちを見ようともしない。 こんな態度……やっぱり聞き間違えたんだ。 さっきのは何かの間違いなんだよ。 だって……コイツがアタシを好きなんてあり得ない。 何年も何年も拒まれてきたんだもの。 そのたびマジョリカを愛してるからって言われ続けてきたんだ。 そんなの知ってるのに、わざわざ、何度も、何度も、そう言ってアタシを傷付けた。
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加