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~~嘘は経年劣化した・弥生視点~~
今なんて言った……?
アタシの聞き間違いか……?
耳の奥がズキズキする。
こんな所が痛むのはいつぶりだろう?
ジャッキーが黙り込んでいる。
エイミーちゃんが何か言ってる。
声が響いて良く聞こえない。
何を言ってるの……?
……さん、いさん、……じょうぶ?
「弥生さん! 大丈夫? って大丈夫そうじゃないな……ホラ、お茶飲んで。ジャッキーさんは……ああ、はい。思いっきり言っちゃってましたよ、」
この中で一番冷静なエイミーちゃんが、アタシの手首を握り続けるゴツイ手を慎重に外してくれた。
解放された手首を見れば、薄っすらと力の跡が残っている。
「……はぁ、ジャッキーさん、だいぶ落ち着いたみたいですね。僕、今日は帰ります、明日も仕事だし。あとは二人で話してください。
……だからっ! ”話す事は無い”じゃないですよ。好きなんでしょう? 事情も葛藤もあるんでしょう? 知ってますから! だけどね何も無かったコトには出来ないですよ、ちゃんと説明してあげてください。……弥生さん、本当に悩んでるんですよ……って……すみません。そんなの僕よりジャッキーさんの方が知ってますよね」
ドアの閉まる音がして急に静かになった。
玄関でエイミーちゃんを見送ったジャッキーが、部屋の中に戻ってくる。
テーブルの上には食べ残したヨーグルト、エイミーちゃんが淹れてくれたお茶はもうすっかり冷めていた。
ジャッキーはアタシから少し離れた場所に座り、半分背中を向けている。
こっちを見ようともしない。
こんな態度……やっぱり聞き間違えたんだ。
さっきのは何かの間違いなんだよ。
だって……コイツがアタシを好きなんてあり得ない。
何年も何年も拒まれてきたんだもの。
そのたびマジョリカを愛してるからって言われ続けてきたんだ。
そんなの知ってるのに、わざわざ、何度も、何度も、そう言ってアタシを傷付けた。
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