第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「いくら愛しいと思っても……」 アタシの両手をそっと放したジャッキーは、大きな手で片頬を包んでくれた。 指先で止まらない涙を拭ってくれる。 気持ちは”好き”でいっぱいになってしまう。 「自分には妻がいる。マジョリカを心から愛してる。弥生を好きになるわけにはいかないだろう? それなのに”自分を一生好きでいろ”などと口走ってしまった。取って付けた言い訳で、”いつか弥生に好きな人が出来るまでだ”と言ったけど、あんな事を言った自分に戸惑ったんだ」 「”一生好きでいろ”は本気で言ったの?」 「……半分は本気だ」 「そっか……」 言われなくても、アタシは一生好きだと思う。 だけどね、半分でもいいよ。 ジャッキーが本気でそう望んでくれていたのかと思うと……ダメだ……また涙がいっぱい出ちゃうよ。 「今夜は特別だって一緒に眠って……次の朝、自分は弥生のキスで目を覚ました。おまえは自分が寝ていると思ったんだろう? あんな事されて眠っていられるはずがない。すぐに止めさせようとしたのに……気持ちが言う事を聞いてくれなかった。眠った振りをして受け入れたんだ」 「気付いてたんだ……」 「そうだ、ズルイだろう? ごめんな。おまえともう一度キスしたかったんだ。それでも……途中でやっぱり駄目だと思った。だから起き上がったんだ」 「……でも……その後、アンタはアタシにキスしたよ?」 「……ああ、した。あの時のおまえの顔が……あまりにも悲しそうで、怒られるのを覚悟した子供のように見えて、何も言わないまま、ただ自分を見上げて、その顔を見たら無性にイライラした。笑えば可愛いのに、自分に愛されたくて、自分に怒られたくなくてオドオドして、いつもの強い弥生はどこに行ったんだよって。だけど弥生をこうさせたのは自分なんだと思ったら、自分に腹が立って。あの時……頭で考えるより先に弥生の顔を掴んでた。乱暴にしてはいけないと思ってるのに止められなかった。これが最後だからと自分に言い聞かせて……キスをしたんだ」 最後のキスだと言い聞かせて…… ああ、そうか……やっと分かった…… だからジャッキーはあの時、 キスを止めた後、 ____今のをずっと覚えてろ って言ったんだ。
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