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「いくら愛しいと思っても……」
アタシの両手をそっと放したジャッキーは、大きな手で片頬を包んでくれた。
指先で止まらない涙を拭ってくれる。
気持ちは”好き”でいっぱいになってしまう。
「自分には妻がいる。マジョリカを心から愛してる。弥生を好きになるわけにはいかないだろう? それなのに”自分を一生好きでいろ”などと口走ってしまった。取って付けた言い訳で、”いつか弥生に好きな人が出来るまでだ”と言ったけど、あんな事を言った自分に戸惑ったんだ」
「”一生好きでいろ”は本気で言ったの?」
「……半分は本気だ」
「そっか……」
言われなくても、アタシは一生好きだと思う。
だけどね、半分でもいいよ。
ジャッキーが本気でそう望んでくれていたのかと思うと……ダメだ……また涙がいっぱい出ちゃうよ。
「今夜は特別だって一緒に眠って……次の朝、自分は弥生のキスで目を覚ました。おまえは自分が寝ていると思ったんだろう? あんな事されて眠っていられるはずがない。すぐに止めさせようとしたのに……気持ちが言う事を聞いてくれなかった。眠った振りをして受け入れたんだ」
「気付いてたんだ……」
「そうだ、ズルイだろう? ごめんな。おまえともう一度キスしたかったんだ。それでも……途中でやっぱり駄目だと思った。だから起き上がったんだ」
「……でも……その後、アンタはアタシにキスしたよ?」
「……ああ、した。あの時のおまえの顔が……あまりにも悲しそうで、怒られるのを覚悟した子供のように見えて、何も言わないまま、ただ自分を見上げて、その顔を見たら無性にイライラした。笑えば可愛いのに、自分に愛されたくて、自分に怒られたくなくてオドオドして、いつもの強い弥生はどこに行ったんだよって。だけど弥生をこうさせたのは自分なんだと思ったら、自分に腹が立って。あの時……頭で考えるより先に弥生の顔を掴んでた。乱暴にしてはいけないと思ってるのに止められなかった。これが最後だからと自分に言い聞かせて……キスをしたんだ」
最後のキスだと言い聞かせて……
ああ、そうか……やっと分かった……
だからジャッキーはあの時、
キスを止めた後、
____今のをずっと覚えてろ
って言ったんだ。
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