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アタシがそう言った事にジャッキーは何も答えなかった。
暫く黙って、考え込んで、
____もう少しだけ話したい事がある、弥生の事だ。
そう言って、アタシの事を話し始めたんだ。
ジャッキーが現世に戻って一ヶ月後。
アイツはわざわざ自分を襲った悪霊達がいる廃ビルに行ったって……エイミーちゃんも聞いたか?
アイツ、格好つけた事言ってただろ。
____怖かったけど、自分以外の人も被害に遭うかもしれない、
____それが心配で様子を見に行った、
あれは半分本当で半分嘘だ。
マジョリカと逢えなくて、辛くて淋しくてたまらなかったジャッキーは、あわよくば悪霊達に、もう一度殺されようと思って廃ビルに行ったんだ。
家族には悪いけど、マジョリカに逢いたくて仕方がない。
“現世で頑張ってくる”と言って戻ってきたのに、淋しさに負けて、無職のまま、何もしないまま黄泉に逝ったのでは呆れられる。
だから……自殺では合わせる顔がないけど、他殺なら堂々と黄泉に逝けるってさ。
そうじゃなきゃ、恐怖体験をした廃ビルなんてわざわざ行かないよ。
あの頃のジャッキーは霊媒師でもエクソシストでもない。
ただの無職だったんだから。
そこに訳の分からない酔っぱらいのアタシがやって来て、アテにしていた悪霊達を瞬殺されて、アイツの都合もガン無視で飲みに連れられ、強引に霊媒師にさせられて、これからどうなるんだろうって身震いしたらしい。
入社しててからがまた大変だった。
研修はハードだわ、OJTではロクな説明もないまま悪霊と戦わせるわ、研修が終わっても現場は常に一緒のツーマンセルで、最初こそ強かったアタシは戦闘中に凡ミス連発するわ、危なっかしくて見てられなくて庇って守って、毎日が嵐のようだったって言われたよ。
あぁ、言っとくけど、ツーマンセルの相手がジャッキーじゃなければミスはしない。
しょっちゅう見惚れてたからミスったんだ。
忙しすぎて、覚える事が多過ぎて、嵐の毎日を過ごすうちに、淋しい辛い、死にたいと思う日が減っていく。
アタシといると振り回されて、嫌でも大雑把になる、些細な事などかまってられなくなる、雑談はくだらなすぎて、無理して話してる訳じゃないのに、いつまでたっても話が尽きない。
延々喋って笑いすぎて、腹筋が痛くなったって言ってたよ。
____弥生は妹のような、男友達のような、一緒にいるとバカになって笑って笑って、笑った分だけ元気になれて、休みの日には死にたくなるけど、会社で会えたらまた笑う。だからとりあえず、今日だけは生きてみようと思えたんだ。
現世もそんなに悪くない……そう思い始めた頃、アタシがジャッキーに告白した、カノジョになりたいって。
ジャッキーは困惑した。
一緒にいるのは楽しいけど、そこに恋愛感情はない。
妹だと、男友達だと思ってた。
そもそも言ってないだけで妻がいる、付き合えるはずがない。
だから当然断った、けど、その時のアタシ、死者みたいな顔をしてたんだって。
いつも明るく笑って怒ってふざけてるのが別人みたいに。
責任を感じたって。
10も年下のアタシに勘違いをさせてしまった。
早く自分を忘れられるようにしてあげなくちゃいけない。
だからツーマンセルで組む事にNGを出し、会社で会っても避けるようにした。
これでいい、これが弥生の為なんだと、アタシとの接点をどんどん減らし、しまいにはゼロにして、そして。
ジャッキーの死にたい病が再発した。
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