第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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中にはさ。 良い大人が甘えるな、強くなれ、みんなそういうのを抱えてる、みんな同じに辛いんだ、それでも頑張って生きている、そんなのは言い訳だ、誰かを傷付ける想いは悪だ____そう非難する人もいるだろう。 間違っちゃないよ、きっとそれが正しいんだ。 間違ってるのはアタシとジャッキーだ。 だけどさ、みんなそんなに強いのか? 誰も彼も、泣きたいほど辛い時、それでも正論に乗っ取って、ひとつも間違える事なく正しい道だけを進めるのか? 辛さに溺れて、もがいて苦しくて助けてほしいと強く望んで、傍にいる優しい人に、好きな人に、必死になってしがみついたりしないのか…………? …………あぁ、ごめん。 今のはまるで、アタシを正当化してるみたいな言い草だ。 チガウ、そうじゃない、ただ、アタシとジャッキーは無理だった。 間違いを知っていながら、依存して感謝して、結局は愛してしまった。 だけどそうだよ。 間違ってる事は痛いほど知っている。 アタシを……間接的に救ってくれたマジョリカを傷付けたくない。 ジャッキーが大好きだけど、片想いの頃とは違うから、気持ちが通じてしまったから、だから、サヨナラだ。 もう一度サヨナラって言った時のジャッキーは、悲しそうで、辛そうで、だけどもう声を荒げたりはしなくって、きっとコイツも分かってるんだって思った。 だってさ、出逢った頃からそうだったもの。 好きな食べ物も好きな飲み物も驚くくらい一緒でさ、何時間でも話していられるくらいに気が合った。 アタシ達はさ、すごく似てるんだ。 暫く見つめ合ったよ。 二人で写真とか撮った事がないから、焼き付けておきたかったんだ。 それからジャッキーはアタシの事を抱き寄せて、 ____わかった、もう逢わない、 って言ったんだ。 そして、 ____おまえを愛してる、 とも言った。 そういうコト言うなって、泣きながら笑ったら、 ____自分はもう、誰にも嘘をつきたくないんだよ、 それが、ジャッキーの最後のコトバだった。
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