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「ちょ、二人とも落ち着いて? ね? 仲良く! みんな仲良く!」
ダメ元で声を掛けてみる。
てか最近、僕の前で喧嘩する人多すぎ!
もっと平和にいきましょうよ。
なんなら美味しいハーブティーを淹れてあげます、と思っていたのに。
人の嫌がる事をさせたら世界一な水渦さんが、弥生さんの傷を的確に突いた。
「ヒステリーは迷惑です。はぁ……志村さんを見る目が変わりました。配偶者がいながら、なにもこんな下品な女に手を出さなくても良いようなものを、」
……え?
今、なんて言った?
バッとすごい勢いで弥生さんが僕を見る。
見られた僕は、高速で首を振り、決してジャッキーさんとの事を話していないと否定した。
「なぁ、クソ水渦……アタシを勝手に霊視のか? だが、アイツとの事はウォールをかけている。誰も霊視はずなんだけどな、」
空気が痛い、肌がヒリヒリする。
ジャッキーさんが怒った時と同じ空気だ。
二人はこんなところまでよく似ている。
てか、ウォールってなに? 壁? ジャッキーさんとの事は覗けないようにブロックしてるの?
「ウォールの印、ですか。大倉さんがよく結べましたね。頭が悪くて印は何一つ結べないかと思っていました。もっとも、ウォールは工程も少なく、赤子でも結べる印ですが。勘違いしないでください。霊視したのではありません。岡村さんと話してる声が廊下まで聞こえてきたのです。深刻そうな雰囲気で、部屋に入れませんでした」
シレっとそう答えた水渦さんだったが、いや、研修室のドア閉まってたし、廊下まで話は聞こえないと思うんだけど。
「水渦さん、ちなみにどの辺にいたの? 廊下にいて本当に話聞こえた?」
と聞いてみれば、
「た ま た ま 、増幅の印で聴力を強化していたので、聞こえてしまいました」
だそうだ。
絶対嘘だ、盗み聞きする為に聴力アップさせたんだ。
「下品なのはどっちだよ。アタシなら人の話を盗み聞きなんてしない。勝手にそんな事をして恥ずかしくないのかよ」
「別に。聞かれて困る事を会社で話す方が間違っています。そういった判断もつきませんか? ああ……申し訳ありません。印も覚えられない頭です、つくはずがありませんでした」
あぁ?
酒焼けのハスキーボイスが短く疑問を投げかけた半瞬後。
弥生さんの手には紫色の霊刀が握られていた。
ややややや、そんな物騒なモノはしまおうよ!
……
無言の圧を撒き散らす水渦さんも、利き手の五指に蒼い電気をチャージしている。
ややややや、ナイナイ! そういうのナイナイして! しまって!
両者睨み合いが続く緊迫した中、水渦さんが言った。
「志村さんの奥様、でしょうか。以前霊視した時に少しだけ視た事があります」
「最低だな……ジャッキーの過去まで霊視のかよ」
弥生さんの眼に険しさが増す。
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