第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「ん……なんて言ったら解ってもらえるんだろう? ……水渦(みうず)さんには誰か好きな人はいませんか? ああ、そうだ、お姉さんは? 暫く会ってないだろうけど、水渦(みうず)さんにとって大事な人でしょう? もしお姉さんが誰かに危害を加えられたら嫌じゃないですか?」 これなら解ってもらえるだろうか? 「姉に危害、ですか。むしろ私が加えましたけどね。姉の職場を破壊して、そのせいで借金を負わせ、結婚も駄目にしましたから」 アウチ……そうだ、この人スナック襲撃犯だったわ。 この例え駄目だった。 「じゃ、じゃあ、誰か普通に好きな人……っていないか、」 水渦(みうず)さんが恋をしてるとか聞いた事もないし想像もつかない。 挫けそうだ、”誰かを簡単に傷付けちゃいけません”こんなに当たり前な事の説明が難しい。 「好きな人はいます」 「はぁ、ですよねぇ、解らないですよねぇ、……ん? ん? んーーーー!? いるの!? 水渦(みうず)さんって好きな人いるの!? え!? 付き合ってるの? 彼氏がいるの!?」 よくよく考えたら、僕すごい失礼な言い方してない? ちょっと反省……だけど! 恋とは無縁っぽい(だから失礼だろ)水渦(みうず)さんに好きな人って! 「恋人ではありません。あり得ません。私が勝手に好いているだけです。……確かに、その人が誰かに危害を加えられるのは不愉快です」 真面目な顔で答えてくれた水渦(みうず)さん。 どうも今回は理解してくれた感じがする。 それにしても……片想いの人がいるって事だよな……こんだけ空気と人の心が読めない水渦(みうず)さんなのに(だから失礼だろ)……ハッ! まさか、片想いの相手はジャッキーさんなのでは……? この会社で水渦(みうず)さんが懐いてる人は二人。 先代とジャッキーさんだけだ。 先代はさすがに年が離れすぎてるけど、ジャッキーさんならギリ恋愛対象になるんじゃないか? 48才で中高年の”高”の方に属するけど、見た目はとてもじゃないけど48には見えない。 若いのもあるけど、妙に女性を惹きつけるもの(弥生さんとかマジョリカさんとか弥生さんとかマジョリカさんとか)。 「違います。志村さんではありません」 ひぃっ! まただ! また僕のココロを読んだ! 誰だか気になるけど、あんまり詮索するのも悪いしなぁ。 「そ、そうですか。まぁ、その、これからはですね、何かを言う前に、同じ事を水渦(みうず)さんの好きな人が言われたら……って考えてからコトバにすると、きっと喧嘩が減ると思うんです」 「なるほど」 お、なんだか素直じゃない? やっと解ってくれたのか? ついでにもう一言。 「じゃあ、弥生さんにも謝れますよね? 後でゴメンナサイしてください」 「……………………」 あ、これはすごいイヤそう。 まぁ、いいや。 本当に謝るかどうかは本人の判断に任せよう。 好きな人がいるんなら、その人を想ってさ、これからの発言が変わってくれればいいんだけどなぁ。
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