2366人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
三階研修室。
ミーティングと言われていたのに、口寄せは弥生さんがするのだからとロクな説明がない。
そういや言ってたな。
ジャッキーさんが新人の頃も、ロクな説明もしないで悪霊と戦わせたって。
それに比べりゃマシか。
なんたって先代から僕への指示は、”女の子同士が喧嘩をしないように見張ってて”な訳だし。
僕はまだ口寄せ出来ないし、てか習ってないし。
喧嘩の見張りと、あとは弥生さんの口寄せを動画で撮らせてもらって、参考資料にさせてもらおうっと。
そんな僕は今、水渦さんの印の動画を見ながら、復習作業にいそしんでいる。
ツーマンセルのリーダーこと弥生さんは、スマホ片手にうーうー唸りを上げている。
さっきからずっとこの調子だ。
「弥生さーん。今回は良いんじゃない? 緊急事態だよ」
このセリフ、もう10回近くは言っている。
「だ、だってさ! つい先週だよ? ”もう逢わない”って二人で話したのは!
なのに、もう電話するのかよってなるじゃん! なんかカッコ悪いじゃんかー!」
この回答も同数聞いた。
でもねぇ、ジャッキーさんの奥様から口寄せの依頼受けちゃったのよ?
しかも弥生さん指名で、弥生さんに会う為に。
コレって、絶対。
「バレたな」
一言シンプルに言ってみた。
「やっぱりそう思う? つかさ、別にバレるのはいいんだ。アタシだって元々マジョリカ口寄せしようとしてたんだもん。だけどさ、ジャッキーとはもう逢わないって決めて、マジョリカと会う必要はなくなった訳。あとはジャッキーとマジョリカと仲良くやってくれたら良いって思ってたのに……あ、そう考えるとジャッキー的にバレるのマズイな。あーもー! なんでマジョリカはアタシに会いたがるのー!?」
社長の前で、『この依頼受けるよ』なんてクールに言ってたクセに。
今、めっちゃテンパってる。
まー無理もないか。
「なんで会いたがってるのかはマジョリカさんにしか分からないよ。ま、ジャッキーさんから事情を聞けば、理由を知っているか、知らなくてもヒントになる事は何か分かるんじゃないかな。だから早く電話しろっつの」
「やーだー! だってさ、まずなんて言えばいいのよ。『よっ! 久しぶり! 元気? ところでアンタの奥さんがね、』って? ムリムリムリー!」
マイナス12才の可愛い見た目で、フルフルと首をふるのが……ちょっと萌える、仕方ないなぁ。
「じゃあ、僕が電話するよ。僕だって口寄せにツーマンセルで行くんだもの。どっちが聞いても同じでしょ?」
と言ったのに。
「……あ、でも、電話して声聞きたい……」
「じゃあアナタかけなさいよ」
「デモデモダッテ……」
「………………」
「……睨まないでよ」
「睨んでません。ジト目です」
「そか……なんかゴメン……んーんー、あ!(ピコーン)分かった! じゃあさ、エイミーちゃん電話してよ! でもってスピーカーにして! そうすればジャッキーの声が聞ける!」
良いコト思いついた! ってめっちゃ嬉しそう。
まぁ、でも確かにいい考えだ。
じゃ、そうしますか。
最初のコメントを投稿しよう!