第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ 三階研修室。 ミーティングと言われていたのに、口寄せは弥生さんがするのだからとロクな説明がない。 そういや言ってたな。 ジャッキーさんが新人の頃も、ロクな説明もしないで悪霊と戦わせたって。 それに比べりゃマシか。 なんたって先代から僕への指示は、”女の子同士が喧嘩をしないように見張ってて”な訳だし。 僕はまだ口寄せ出来ないし、てか習ってないし。 喧嘩の見張りと、あとは弥生さんの口寄せを動画で撮らせてもらって、参考資料にさせてもらおうっと。 そんな僕は今、水渦(みうず)さんの印の動画を見ながら、復習作業にいそしんでいる。 ツーマンセルのリーダーこと弥生さんは、スマホ片手にうーうー唸りを上げている。 さっきからずっとこの調子だ。 「弥生さーん。今回は良いんじゃない? 緊急事態だよ」 このセリフ、もう10回近くは言っている。 「だ、だってさ! つい先週だよ? ”もう逢わない”って二人で話したのは! なのに、もう電話するのかよってなるじゃん! なんかカッコ悪いじゃんかー!」 この回答も同数聞いた。 でもねぇ、ジャッキーさんの奥様から口寄せの依頼受けちゃったのよ? しかも弥生さん指名で、弥生さんに会う為に。 コレって、絶対。 「バレたな」 一言シンプルに言ってみた。 「やっぱりそう思う? つかさ、別にバレるのはいいんだ。アタシだって元々マジョリカ口寄せしようとしてたんだもん。だけどさ、ジャッキーとはもう逢わないって決めて、マジョリカと会う必要はなくなった訳。あとはジャッキーとマジョリカと仲良くやってくれたら良いって思ってたのに……あ、そう考えるとジャッキー的にバレるのマズイな。あーもー! なんでマジョリカはアタシに会いたがるのー!?」 社長の前で、『この依頼受けるよ』なんてクールに言ってたクセに。 今、めっちゃテンパってる。 まー無理もないか。 「なんで会いたがってるのかはマジョリカさんにしか分からないよ。ま、ジャッキーさんから事情を聞けば、理由を知っているか、知らなくてもヒントになる事は何か分かるんじゃないかな。だから早く電話しろっつの」 「やーだー! だってさ、まずなんて言えばいいのよ。『よっ! 久しぶり! 元気? ところでアンタの奥さんがね、』って? ムリムリムリー!」 マイナス12才の可愛い見た目で、フルフルと首をふるのが……ちょっと萌える、仕方ないなぁ。 「じゃあ、僕が電話するよ。僕だって口寄せにツーマンセルで行くんだもの。どっちが聞いても同じでしょ?」 と言ったのに。 「……あ、でも、電話して声聞きたい……」 「じゃあアナタかけなさいよ」 「デモデモダッテ……」 「………………」 「……睨まないでよ」 「睨んでません。ジト目です」 「そか……なんかゴメン……んーんー、あ!(ピコーン)分かった! じゃあさ、エイミーちゃん電話してよ! でもってスピーカーにして! そうすればジャッキーの声が聞ける!」 良いコト思いついた! ってめっちゃ嬉しそう。 まぁ、でも確かにいい考えだ。 じゃ、そうしますか。
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