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僕のスマホをスピーカーにして机の上に置く。
弥生さんは、まるでただのスマホがジャッキーさんであるかのように、熱い眼差しで見つめてる。
「……緊張するな、」
独り言ちる弥生さんは放っておいて、ジャッキーさんのアドレス登録をタップした。
プルルルル……一回、二回、三回、四回……………………十回、十一回……
「出ないな」
「出ないね」
二人顔を見合わせ、もう三コール鳴らしたところで切電した。
「あ、もしかしたら今、仕事中じゃない?」
思い立ってそう言うと、
「うん。ジャッキー、昨日から現場に入ってるよ」
と軽く言う。
「ちょっと、そういうの早く言ってよ! てか、ジャッキーさんのスケジュール把握してるんだ」
「まぁね、アイツのスケジュールはずっと先まで暗記してるもん。つーかさ、アイツけっこう器用だし、遠隔憑依中でも電話くらい出てくれるんだ。だから大丈夫かと思ったの。それなのに出ないってコトは……トイレかな? ちょっと霊視してみるか」
「バッ! なにいってるのぉぉぉ! 変態! 弥生さん変態!」
さっき水渦さんに、本人の許可なく霊視しないって言ってなかった?
しかもトイレかもな時に霊視しようとするなんて!
「ウソだよ、冗談。まぁ、出ないものは仕方ない。着歴残ってるだろうし、そのうちかかってくるよ。はぁ……緊張したわ……とりあえず、今のうちにミーティングっぽいコトしとくか。まず、どこで口寄せするかだよなぁ。普通はさ、依頼者の自宅でするんだよ。だけど今回はなぁ……アタシんちってものおかしいし」
困ったような口調で思案する弥生さんに「僕のアパートは?」と聞くと「え、いいの……? んー、ま、最終手段という事で」と言われ、また二人で思案再開をする。
「んー人目は避けたいトコロだよなぁ……エイミーちゃん、今夜の天気は?」
弥生さんに聞かれて、スマホで検索。
「今夜はねぇ……晴れだ! 雲もなくて星が良く見えるでしょうって」
「そか。じゃあ外だなぁ。どこか良いトコは……人目がなくてある程度広くて……あ、あった!」
ひらめいた弥生さんがパチンと指を弾く。
その顔は嬉しそうであり、懐かしそうでもあった。
その場所は一体ドコなの?
「アタシんちの近所だ。昔さ、ジャッキーと戦闘訓練をしていた古い公園。あそこならまわりに何もないから、夜中になればまず人は来ない。よし、決まりだ。公園にマジョリカを呼びだそう。時間は深夜0時に口寄せ開始。一旦それぞれ家に帰って仮眠を取って、夜11時に現地待ち合わせだ」
と言われたのだが、一つだけ僕の要望を聞いてもらった。
「現地集合はダメ。僕が弥生さんのアパートまで迎えに行くから、そこから一緒に公園に行こう」
「なんで? エイミーちゃんて方向音痴? 一緒に行かないと迷っちゃうの?」
「方向音痴って程じゃない、地図アプリもあるから迷ったりしない。迎えに行くのは夜だから。女性が深夜に誰もいない公園に行くって危険でしょう? 僕も心配だし、弥生さんに何かあったらジャッキーさんに殺されるよ」
最後のはけっこう本気で思ってる。
ツーマンセルで僕がいながら、弥生さんに何かあったらジャッキーさんは絶対に怒り狂う。
「……もう、そんなんじゃないよ、」
小さな声で呟いた弥生さんは、なんだかもう泣きそうだった。
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