第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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僕のスマホをスピーカーにして机の上に置く。 弥生さんは、まるでただのスマホがジャッキーさんであるかのように、熱い眼差しで見つめてる。 「……緊張するな、」 独り言ちる弥生さんは放っておいて、ジャッキーさんのアドレス登録をタップした。 プルルルル……一回、二回、三回、四回……………………十回、十一回…… 「出ないな」 「出ないね」 二人顔を見合わせ、もう三コール鳴らしたところで切電した。 「あ、もしかしたら今、仕事中じゃない?」 思い立ってそう言うと、 「うん。ジャッキー、昨日から現場に入ってるよ」 と軽く言う。 「ちょっと、そういうの早く言ってよ! てか、ジャッキーさんのスケジュール把握してるんだ」 「まぁね、アイツのスケジュールはずっと先まで暗記してるもん。つーかさ、アイツけっこう器用だし、遠隔憑依中でも電話くらい出てくれるんだ。だから大丈夫かと思ったの。それなのに出ないってコトは……トイレかな? ちょっと霊視してみるか」 「バッ! なにいってるのぉぉぉ! 変態! 弥生さん変態!」 さっき水渦(みうず)さんに、本人の許可なく霊視しないって言ってなかった?  しかもトイレかもな時に霊視しようとするなんて! 「ウソだよ、冗談。まぁ、出ないものは仕方ない。着歴残ってるだろうし、そのうちかかってくるよ。はぁ……緊張したわ……とりあえず、今のうちにミーティングっぽいコトしとくか。まず、どこで口寄せするかだよなぁ。普通はさ、依頼者の自宅でするんだよ。だけど今回はなぁ……アタシんちってものおかしいし」 困ったような口調で思案する弥生さんに「僕のアパートは?」と聞くと「え、いいの……? んー、ま、最終手段という事で」と言われ、また二人で思案再開をする。 「んー人目は避けたいトコロだよなぁ……エイミーちゃん、今夜の天気は?」 弥生さんに聞かれて、スマホで検索。 「今夜はねぇ……晴れだ! 雲もなくて星が良く見えるでしょうって」 「そか。じゃあ外だなぁ。どこか良いトコは……人目がなくてある程度広くて……あ、あった!」 ひらめいた弥生さんがパチンと指を弾く。 その顔は嬉しそうであり、懐かしそうでもあった。 その場所は一体ドコなの? 「アタシんちの近所だ。昔さ、ジャッキーと戦闘訓練をしていた古い公園。あそこならまわりに何もないから、夜中になればまず人は来ない。よし、決まりだ。公園(そこ)にマジョリカを呼びだそう。時間は深夜0時に口寄せ開始。一旦それぞれ家に帰って仮眠を取って、夜11時に現地待ち合わせだ」 と言われたのだが、一つだけ僕の要望を聞いてもらった。 「現地集合はダメ。僕が弥生さんのアパートまで迎えに行くから、そこから一緒に公園に行こう」 「なんで? エイミーちゃんて方向音痴? 一緒に行かないと迷っちゃうの?」 「方向音痴って程じゃない、地図アプリもあるから迷ったりしない。迎えに行くのは夜だから。女性が深夜に誰もいない公園に行くって危険でしょう? 僕も心配だし、弥生さんに何かあったらジャッキーさんに殺されるよ」 最後のはけっこう本気で思ってる。 ツーマンセルで僕がいながら、弥生さんに何かあったらジャッキーさんは絶対に怒り狂う。 「……もう、そんなんじゃないよ、」 小さな声で呟いた弥生さんは、なんだかもう泣きそうだった。
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