第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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手分けして、外周ぐるりと黒い人形(ヒトガタ)を地に刺していく。 刺すと言っても、物理的な釘や針を使うのではなく、霊媒師が放出する電気針で固定させていく。 弥生さんは紫色、僕は赤色の電気針を刺すのだが、そのたび恨めしそうな呻き声が聞こえてくるので、気分は下がる一方だった。 「はぁ……全部刺し終えた。なんか、これだけでグッタリ」 弥生さんも刺し終えたようでスタート地点に戻ってきた。 「OK、じゃあ仕上げるか、」 小箱の中に残る最後の一枚、黒い人形(ヒトガタ)には変わりないが、左胸、ちょうど心臓の辺りに【結】と白い文字が書かれているものを取り出した。 それにフッと息を吹きかけ、 「結べ、」 と一言。 途端、【結】の人形(ヒトガタ)は弾丸ライクなスピードで、グルリの人形(ヒトガタ)の真上スレスレを飛んだ。 三瞬程の時間だろうか、等間隔に刺された人形(ヒトガタ)は黒い稲妻状の線でガッチリと結ばれた。 「これで、解除するまでは人は来ない。あとは……やりたい放題だ!」 ニヤリと笑う弥生さんだが、いや、まさかマジョリカさんとガチ喧嘩とか、本当にやめてね。 だけど、二度あるコトは三度あるって言うからな。 ジャッキーさんvs弥生さん、水渦(みうず)さんvs弥生さんの組み合わせで、二回も僕の目の前で喧嘩が始まったのだ。 どうかひとつ! マジョリカさんvs弥生さんでの喧嘩はありませんよーに! 「弥生さん、口寄せの様子を動画で撮ってもいい?」 スマホを手に持ちワクテカ顔でお伺いを立てる。 許可出たら、ぜんぶ撮って参考資料にするんだ! 「いいけど……撮っても無駄だと思うぞ? だってヤヨちゃんもマジョリカもまともに映らないだろうし」 まぁ霊体だからねぇ、って、アレ? 登場人物一人多くない? 「……ヤヨちゃん? えっと……誰?」 「ああ、説明いる?」 ちょっとメンドクサソウな顔で僕を見るけどさ、 「いるに決まってんだろ」 と答えてみる。 だって本当に分からないし。 「ヤヨちゃんはアタシの守護の子。守ってくれたり口寄せもしてくれるんだ。呼び出したヤヨちゃんが黄泉の国まで逝ってマジョリカを連れてくるの。エイミーちゃんは誠の口寄せ見た事あるんだよな? 誠は思業式神に口寄せさせただろ? それと似たようなモノだ。先代くらい霊力(ちから)があれば、術者だけで口寄せ出来るけど、アタシや誠はちょっと霊力(ちから)が足りないんだ」 「そうなんだ……分かったような分からないような。守護の子ってだけじゃちょっと……詳細説明願いたい」 弥生さんって、説明雑だよな。 複雑なコトはキライ! って言うだけの事はあるクオリティだ。 「んー分かった。けど、先にヤヨちゃん呼んで、黄泉の国に逝かせてからでいいか? マジョリカ迎えに逝ってココに戻るまでけっこう時間かかるからさ。その間、たっぷり説明する時間はあるよ」 「ぜんぜんOK! じゃあ、あとで教えて。てか、そのヤヨちゃんを呼び出すの視れるのも楽しみ! 勉強になるもの」 僕から少し離れた場所に立ち、弥生さんは目を閉じた。 神経を集中させているのか、空気が変わる。 今から弥生さんの”守護の子”が呼び出される。
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