第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ 「ヤヨちゃんの話だよな。それを説明するには、アタシがまだ十代だった頃の話も必要なんだ。退屈だろうけど、ま、適当に聞いててよ、」 …… ………… アタシがまだ小学の五年生だった頃ね。 母親が病気で死んで、一年も経たないうちに、父親が知らない女を連れてきたんだ。 アタシの意見はほとんど聞いてもらえなくてさ、あれよあれよという間にその女と再婚して、すぐに妹が生まれたの。 でもね、新しく構成された家族にアタシは含まれてなかったみたいでさ。 継母は最初から冷たかったんだ。 父親のいる前では猫なで声を出すけど、いなくなれば徹底的に無視をされた。 学校に必要な物を買うお金すら貰えなかったんだ。 まったく大変だったよ。 ____義理の母親も悪い人ではないけど、 前に、エイミーちゃんにそう言ったけどさ、ありゃウソだ。 それでもね最初の頃は頑張ったんだ。 なんとか家族の一員になりたくて、継母に好かれようとして、生まれたばかりの妹の面倒を見ようと思ったんだよ。 だって、いっつも大変だ大変だって機嫌悪かったから、面倒見れば役に立つかなって。 でも全然ダメ。 逆効果もいいトコで、継母は赤ん坊にちょっかいを出すなって顔を真っ赤にして怒鳴り散らしやがった。 苛めるつもりなんかないのにね。 それならと、家事を手伝ったてみたの。 汚れた食器の洗い物、掃除機をかけ、洗濯もした。 だけどそれも怒られる、雑だ、汚れが取れてない、余計な事をするな、って。 かといって、余計な事はもうしないと家事をしなくなれば、家の事をなにもしないと父親に言いつけるんだ。 どうしろって話だよ。 何も知らない父親は、アタシが泣くまで叱りつけたっけ。 何をしたって気に入られない。 丁度その頃中学生になってさ、迎えた反抗期もあってアタシはどんどん荒れていったんだ。 ”ヤンキー”と呼ばれる不良達とつるむようになり、悪い事はなんでもやったよ。 まだ世間も、人の痛みも、そんな小難しいコトが解らないアタシは、加減も分からず、あらゆる不満と鬱積を暴力に変換してさ、その日の怒りを消化したんだ。 だけどまた次の日になれば、継母の怒鳴り声と自分の味方をしてくれない父親への怒りで心は真っ黒で、それを消化する為に誰彼構わず喧嘩を売った。 そんなんだから勉強はしなかった。 学校には行くけれど授業は出ない、聞いてない授業が分かるはずがない。 ま、それでもなんとか、アタシでも受かるバカ高校を受験して進学したんだけど……地元の高校を選んだのが失敗だったよ。 アタシ、ガチヤンキーとしてあまりにも有名になってたみたいでさ。 高校行っても避けられちゃって、友達が一人も出来なかったんだ。
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