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心の底からすべてを呪った。
父親も継母も、黒い人形も、昔の仲間も、高校の生徒も教師も、アタシに害を成す者すべてを憎み呪った。
人を殴る為だけに使ってきた木刀を、家の中で振り回しメチャクチャにした。
あれだけアタシを苛めた継母は泣きながら逃げていた。
父親もオタオタするだけで、アタシに何も言えない。
唯一可愛がってた妹が泣き出して、木刀を持ったまま家を飛び出したんだ。
外に出ればあっという間に黒い人形に囲まれて、目隠しをして走っているみたいでさ。
それでもガチギレしてたからね、車も人も無視でひたすら走ったんだ。
死んでもいいと思った。
むしろそのほうがスッキリすんじゃないかって思ってた。
息が切れて、もう走れないって座り込んだそこは……重なる人形の隙間から覗いたら懐かしい中学校だったんだ。
夜は遅いし、残業の教師すらいなそうで、アタシは壁を乗り越え中に入ったの。
どうせ行くトコはない、学校の中なら車も来ない。
ここで過ごすのが良いだろう。
だけどウザイ黒い人形だけは、数がどんどん増えていく。
____イライラする、
____怒りで視界が紅くなる、
今までにないくらい腹が立った。
中学の頃、怒りを暴力に変換して誰彼構わず喧嘩を売ってきた。
今抱える怒りをなんとかしたいなら、コイツらと喧嘩するしかない。
暴力に飢えていたんだ。
誰かを殴った時に伝わる感触が懐かしくてたまらなかったよ。
黒い人形達を思いっきり殺る事が出来たら吐かなくて済むのにって、確かな殺意が脳ミソを侵食した____同時。
身体の奥から得体の知れない、強烈な力が沸き上がってくるのを感じたんだ。
それが何なのかは分からない。
複雑な事は好きじゃない、けれど確信は持てた。
これはコイツらをぶっ潰す為の力だ。
普段は殴りかかっても素通りしてしまう黒い人形。
何故か今ならいける、って感じた。
その時、頭の中に言葉が降ってきた。
誰かの声が聞こえたんじゃなく、文字が降ってきたんだ。
【つラいの、くやシいの、おこルの、こわいノ、ナきたいの、ミジメなの、ヤサシクされたいの、てんテンてん、まだマダいっぱいあるよ、やよいはいっパイもってるヨ、カワイソウなやよいちゃん、カゾクのきらわれモノ、オトモダチもいなぁい、だれもやよいがスキじゃなぁい、でもチカラをもってるよ、チカラはやよいのタカラモノ、やよいをスクウもの、これがあればケンカができるよ、ツカッテゴラン】
頭の中に平仮名と片仮名の雨が降る。
なに今の……だけど考えたって分からない。
複雑な事、難しい事は嫌いだもの。
だけど単純なのは大好きだ。
握ったままの木刀は紫色に光りだし……
____これくらい分かりやすいモノなら最高だ、
____ツカッテゴラン、って言うのはコレの事だろう?
文字を誰が降らせたかは知らない。
だけどさすがにこの流れは分かるよ。
きっとこの光る木刀でなら、黒い人形をぶっ飛ばせるはずだ。
それはアタシの予想を裏切らなかった。
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