第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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よく勘違いされるんだけどさ。 ヤヨちゃんは、名前も”ヤヨイ”で、顔もそっくりだから、アタシの中の別人格じゃないかって言われる事が多いんだ。 全ての事がうまくいかなくて、強いストレスが生みだしたんじゃないかってさ。  でも、違う、そうじゃない。 それなら何なのか? 高校進学して、家にも学校にも居場所がなくて、心が弱っていたアタシに付け込んだ悪霊集団の中には、悪霊でないモノ達も混ざってんだ。 それは神様のなりそこない達だ。 元は人の死者で、霊力(ちから)が足りないんだか、器が足りないんだかでなれなかったって。 どこどこの地域限定で担当するローカルな神様だから、そんなにメジャーじゃないヤツな。 なりそこないの神候補達は……何人って言ってたかな?  忘れた、けっこういっぱい。 ソイツラがアタシの中に眠ってた霊力(ちから)に入り込んだんだ。 ”神候補”って言うと、みんなスゴイなぁって言うけど、冷静に考えてみて。 ”神”ならすごいけど、候補だし所詮脱落者だ。 難しい試験受けたけど落ちました、資格取れませんでしたってヤツ見て、有資格者と同じ扱いしないだろ?  それと同じだ。 ただね、アタシにとってはご立派な神様より、脱落者のヤヨちゃんの方がぜんぜん良い。 神様はなんもしてくれないけど、ヤヨちゃんはアタシを助けてくれる、支えてくれる、愛してくれるもの。 悪霊達の中に混ざっていた元神候補達は、ボロボロにされるアタシを救いたいって思ってくれたんだ。 だけどさ、どんどん増える悪霊達に対抗出来る霊力(ちから)なんて持っちゃいない。 そんなものがあれば当然神になれていた、無いから脱落したんだ。 日に日にエスカレートする悪霊達の嫌がらせ。 血の混ざる胃液を吐いて、誰にも助けてもらえず苦しむ非力な女子高生。 友達はいないわ、家族からも嫌われているわ。 アタシに向けられる周りの感情はネガティブなものばかりで、『いなくなっても構わない』『迷惑かけるな』『学校に来るな』『家出してくれないかしら』等々。 元神候補達は首を傾げたそうだよ。 そこまで言われなくてはいけない子なのか? 暴力的だが、それには理由がある。 その理由は周りがこさえてるというのに。
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