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【まじょりか ばいばい】
少ない文字を降らせたヤヨちゃんは、クルリとターンしタタタと走り、大好きな弥生さんに抱っこをせがんだ。
マジョリカさんをじっと視つめていた弥生さんは、甘えるヤヨちゃんをすぐに抱き上げ頬ずりをする。
「おかえり、ヤヨちゃん。ありがとね。つかれただろ? 少し眠るといいよ」
弥生さんがそう言うと、うん、と首を縦に振り、ちっちゃな手で目を擦りながら砂のように消えた。
「弥生さん、ヤヨちゃんは?」
「黄泉の国との往復で疲れちゃったんだ。寝かすのにアタシの中に戻した。ダイジョウブだよ。ちょっと寝れば、ウルサイくらい元気になる」
そっか……良かった。
で、どうしよう。
空気重……てか、これってジャッキーさん呼んだ方が良いんじゃないの?
でもな、マジョリカさんはきっと弥生さんと話したいんだろな。
だからわざわざ、弥生さん指名で口寄せを依頼したんだろうし。
怖いもの見たさで女性二人を盗み視れば、マジョリカさんも弥生さんも無言で視つめ合っている。
お互いになんと声を掛けていいか分からない、そんな所か。
ん……てか、この空気に僕が耐えられそうにない。
僕はそっとツーマンセルのリーダーに近づいて、
「弥生さん、ダイジョウブ? 固まってるよ?」
小さく声を掛けてみた。
石化解除なるか?
「あぁ、ごめん。大丈夫だ」
弥生さんは僕に軽く手を上げて、その手で自身のほっぺをペチペチ叩き、リセットを掛けている。
一方マジョリカさんは、宝石の美しさを崩さずに、ただただ弥生さんをジッと視つめていた。
美人の無表情ってなんかコワイ……ってゴメン、今は笑えないか。
株式会社おくりびの”斬り込み隊長”と言えば、社長か弥生さんだ。
さすがに今回は気後れしてそうだけど、なにかあったら僕が助けます。
頑張ってっ!
「マジョリカ……ビアンコさん?」
喋ったーーーーっ!
マジョリカさんの名前言っただけだけど!
生まれたての小鹿くらいのヨタヨタっぷりだけど!
頑張ってるっ!
「あ……っと、本日は弊社をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。え……っと、私、ご指名頂きました、株式会社おくりびの、おお、」
『大倉弥生、』
あ……マジョリカさん、被せてきたよ、しかも呼び捨て。
こんなん……いつもの弥生さんなら怒るよなぁ。
でも……
「……そうです、大倉です。……こちら、同じく弊社霊媒師の岡村英海、本日は私共二人で担当させて頂きます」
弥生さん……よくぞキレずに頑張った(キレないのが普通?)。
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