第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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今度はマジョリカさんが腑に落ちない顔をしている。 ジャッキーさんは、現世に好きな(ひと)が出来たと言ったんだ。 それなのに、弥生さんの一方的な片想いという言い分とアンマッチが生じる。 当然、ソコ、突っ込むよね。 『……ジャッキは、大倉弥生を好きになったって言ってたよ。二人の言ってる事が違うんだけど、』 「それはさ、たぶんアイツはアタシに同情したんだよ。いい年して聞き分けもなく追い回して、年だけ取っちゃって、可哀想に思って、ぜんぜんジャッキーのせいじゃないのに責任感じたんだろ。アイツは変に優しい所があるから、同情と好きを混合したんだ。目を覚ませば気付くはずだよ」 ん……ちょっと苦しい言い訳だ。 そう思うのは、僕が事情を知っているからだろうか? マジョリカさんは『……それ……ホントか?』と、少しだけ険の取れた顔で、弥生さんさんを視詰めている。 「ああ、悪いのはぜんぶアタシだ。ジャッキーは悪くない」 『ふぅん……だけど大倉弥生の気持ちは? まだジャッキが好きなんじゃないの? 忘れられなくて、しばらくしたらまたしつこく追い回すんじゃないの? そんな事するつもりなら、ウチ……絶対に許さない』 「いや……心配しなくていいよ。先週、話をした。ジャッキーも言ってただろう? もう会わないって決めたんだ。ああ、言っておくけど元々頻繁に会ってた訳じゃない。アタシがしつこく誘った。同情でゴハンくらいは付き合ってくれた、それだけだ。ジャッキーはアタシから解放されたんだよ、」 弥生さん、泣きたいのをすごくガマンしてるんだろうな。 頑張って嘘ついてる。 でも、ジャッキーさんをまだ好きかって、それに対しては答えないんだね。 そこだけは嘘つきたくないのかな。 『確かに言ってた……もう大倉弥生とは会わないって、』 弥生さんはマジョリカさんの口から聞く、ジャッキーさんの『もう会わない』という言葉に微かに唇を噛んだ。 「……二人には迷惑をかけた。二度とジャッキーの前に姿を見せないから、」 これで……解決の方向に向かうのだろうか。 弥生さんが一方的にジャッキーさんを追い回した事にして、ジャッキーさんの想いは同情を錯覚したのだと言い張って、もう二度と姿を見せないと誓って。 事実とは違う嘘を並べた弥生さんは、ジャッキーさんとマジョリカさんが上手くいく事だけを願っている。 ジャッキーさんがつきたくないという嘘を、弥生さんがかわりについている。 だけど……ジャッキーさんは、こういうのを望んでいるんじゃないと思うんだけどな。 僕からも少し、話を聞いてみてもいいかな。
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