第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

125/222
前へ
/2550ページ
次へ
『うん……あのね、大倉弥生はね、黄泉の国にある【光道(こうどう)開通部】の中で有名なんだ、』 「有名って……どう有名なんですか? 弥生さんは黄泉の国に逝った事はないはずだ。ジャッキーさんみたいなのはレアケースですよね?」 僕がそう質問すると、『ジャッキのはレア中のレアだよ』と答えてくれて、それならどうして弥生さんは……詳しい事を教えてくれた。 大倉弥生は【無茶な要求をする日本の霊媒師】って、ココ10年、オペレーター達の中で一番の有名人なんだ。 声も態度も大きくて、他の霊媒師なら言わないような事を平気で要求するの。 ウチの所属している【光道(こうどう)開通部】は、死者の為に光る道を伸ばしてあげて、迷わず安全に黄泉の国まで来られるように導くんだ。 基本的には死者一人につき一本の光る道。 地球から黄泉の国まで、かなりの距離があるから、途中、事故が起きないように強度を計算して造ってるの。 たまにはね、いろんな事情で光る道を3~4本くっつけて、広い道にしてほしいなんて言われる事もある。 たとえば……悲しい事だけど、事故等で一度に複数の人が亡くなったとか、そういう時。 大倉弥生も光る道をくっつけて伸ばしてーって、よく呼びかけてくるけど、その本数が無茶なんだ。 一番最近だと……少し前。 廃病院に長い間憑いていた、元院長先生と元看護師さん達。 その死者達が全員揃って成仏するコトになったから、みんなで一緒に黄泉の国に逝けるようにしてーって、総勢15人分の大きな道を伸ばしてほしいと呼びかけてきたの。 15人分だよっ?  光る道を15本、横並びに繋げろって! 試算すれば日本の一般的な道路三車線分の幅広で、受けたオペレーターはそんなの無茶だと大騒ぎになったんだ。 道の統合途中で強度が持たずに崩れちゃうのが目に見えてるもの。★1 アレは結局ウチが伸ばした。 受けた一般オペレーターでは対処しきれなくて、チーフにエスカレーションされたんだ。 モタモタはしてられない。 大倉弥生の呼び声が、フロア中に響いてるんだ。 ウチ、どうしたらいいだろうってフル回転で考えて、幅が広くても崩れないように、あえて細い光る道を無数用意して、それを編み込み強度をあげて、【光道(こうどう)開通部】の意地を見せなきゃって、大倉弥生に負けるもんかって、気合入れて仕上げたの。 なんとか完成した光る道が黄泉から現場まで、無事に崩れず伸び切るか、ハラハラしながら見守った。 それがちゃんと到着した時は、【光道(こうどう)開通部】のみんなで喜んだんだ。 ★1:第九章 霊媒師・弥生-2、この時の光る道を呼ぶシーンです。 https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=320&preview=1
/2550ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2367人が本棚に入れています
本棚に追加