第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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大倉弥生はしょっちゅう無茶を言うの。 それは”光る道”だけじゃない。 黄泉の国には、各星の凶悪な悪霊を監視・駆除する特殊部隊がいるんだ。 各星各所に憑りつく悪霊達。 各所回って順番に駆除・回収に行くけれど、数が多くていっぺんに対処はできない。 だから順番が先の悪霊はマークして見張ってるの。 監視中、もしも暴走して生者に害を成す時は、黄泉の特殊部隊が、優先して各星現場に向かうんだ。 だけど……大倉弥生は特殊部隊が動く悪霊さえも滅してしまう。 滅してくれるのは良いの、助かるし。 でもね、滅した後に大量に発生する瘴気を『コレなんとかしてーっ!』って、【光道(こうどう)開通部】に呼びかけてくるんだけど……言われても困る……だってそれ、ウチラの仕事じゃないもん、してあげたくも出来ないもん。 だからそのたび、ウチが特殊部隊に取次ぎをするコトになるんだ。 いつだってこの調子だから、【光道(こうどう)開通部】のオペレーター達は大倉弥生の呼びかけにビクビクしてる。 でもね……ウチはね、それを密かに楽しんでたの。 「マジョリカチーフー! また大倉弥生が無茶言ってきたー!」 って、エスカレーションされるのが面白くもあったんだ。 エスカレされれば大変だけど、その分燃えた。 ウチと大倉弥生の勝負だって思ってた。 いつだってウチが勝ってきたんだから。 無茶な要求、ぜんぶクリアしてやった。 ホント……無茶ばっかり。 でも、キライじゃなかったよ。 だって、大倉弥生はいつだって真剣で一生懸命なんだもの。 全力だから要求が無茶になるんだ。 手を抜いたり、余計なコトはしませんって霊媒師だったら、大した依頼はしてこない。 大倉弥生からは、ちゃんと死者を送り出してあげようって気持ちが、必死さが、すごくすごく伝わてくるの。 会ったコトはないけど、声しか聴いたコトはなかったけど。 10年近くも大倉弥生と勝負してたから、多少はわかってたつもり。 大倉弥生は強引だけど死者の事しか考えてない、根は……優しい子だ。 いつか大倉弥生が死んで黄泉の国に来たら、一緒に光道(こうどう)で働きたいなって、特殊部隊に取られないようにしなくっちゃって思ってた。 きっと仲の良い友達になれるって思ってたんだ。 なのにさ……なにも、こんな。 好きな人の事で勝負なんてしたくなかったよ。 ウチ……大倉弥生が好きだったのに。
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