第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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「マジョリカさんと弥生さんが繋がってたコトは、言ったんですか?」 『大倉弥生に? ううん。ジャッキの事で、それどころじゃないし、なんか……今は言いたくなかったし……複雑だよ。ウチ……ジャッキが大好きなんだ。そのジャッキが大倉弥生を好きになってしまって……正直……憎たらしいよ……でも、』 ガクッと肩を落とし、ジャッキーさんへの気持ちと、弥生さんへの気持ちとがゴチャゴチャになってるみたいで、なんとか少しでもいい方向へ向かえないだろうかと思う……こればっかりは難しいんだけどさ。 あ……そうだ。 「ねぇ、マジョリカさん。明日、明るくなったらジャッキーさんの家に行ってみませんか? ココから近いんだ」 『えっ……! ココの近くなの? 行くっ、行きたい! 連れてって、ジャッキに逢いたいよ!』 「もちろん連れて行きますよ。二人でちゃんと話した方が良い」 良かった、嬉しそうだ。 逢いたいよね、顔見て話したいよね、当然だよ。 それに僕もジャッキーさんに会いたい。 確かめたい事がある。 僕の考えすぎなら良いんだけど…… 『嬉しい、嬉しい、嬉しい! 岡村アリガト! ウチねジャッキに逢いたいのはもちろんだけど……ちょっと心配な事があるんだ』 「心配事?」 『うん……岡村はさ、ジャッキがバラカスのサーバーを使ってるのは知ってる?』 「知ってます。第98霊力(パワー)サーバー。これにアクセスして霊力(ちから)を得てるんですよね。ジャッキーさんは元々、霊能力者じゃない。あの霊力(ちから)はサーバー無しでは成立しないって言ってました」 『そうだよね……なのにジャッキ、「もうサーバーは使わない」って。先週、一回だけバラカスに連絡が来て、その時に言ったんだ」 「使わない? だけど、それじゃあ……」 『「自分はマジョリカを裏切った。同じくらい好きな女が出来てしまった」って……バラカスはさ、黄泉の国の住人だけど、ちょっと毛色が違うんだ。多少の悪いコトも容認しちゃう。「そのくらいのコトでサーバーを取り上げたりしねぇよ。オマエは男でまだ若い、他の女を抱く事もあるだろ」……話はそれで終わったけど、それ以来アクセス履歴が無いの……ねぇ、岡村。ジャッキはウチになんにも話してくれないから分からないんだ。霊媒師の仕事って、霊力(ちから)が無くても出来るの?』 サーバーにアクセス履歴が無い? いやだって、ジャッキーさんは昨日から…… 「…………いや、不可能です。僕らの仕事は霊力(ちから)が無ければなにも出来ない。……だけど、ジャッキーさんは昨日から現場に入ってるはずなんだ。アクセスしてないならどうやって仕事してるんだ……?」 『岡村……ジャッキに何か良くない事が起きてるの……?』 マジョリカさんの顔が蒼白だ……あまり心配はかけたくないけど、 「今のジャッキーさんに残ってるスキル、魂に癒着させた光る道の欠片、それと眼だ。死者を視る眼はサーバーとは別なはず……てことは、光る道の欠片効果で野良幽霊を集め、それらを視る事も可能。ただし、対抗できる霊力(ちから)はゼロって事か……」 『……岡村、』 不安そうに僕を視るマジョリカさんの頭をクシャクシャと撫ぜ、「大丈夫だよ」とだけ声を掛けた。 そして、 「弥生さーーーーんっ!」 深夜の迷惑も考えず、ツーマンセルのリーダーを呼んだ。
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