第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ AM2:37 顔つきが変わった。 弥生さんの眼が獣のように鋭くなっている。 「アタシもサーバーの話は昔聞いた。それにアクセスしてる形跡がないんだな? じゃあどうやって仕事してるんだ……サーバーの代わりになる霊力(ちから)を得るには……」 弥生さんは独り言ちた後、自身のスマホを取り出しタップして、暫く待ってもう一度タップする。 「ジャッキーさんに掛けたんですか?」 「ああ、だが出ない」 弥生さんは5秒考え、再びスマホをタップした。 ジャッキーさんには今掛けたばかりだよね。 何処に掛けてるんだ? てか時間……! 「あ、誠? 弥生だ。あのさ、聞きたい事があって、……あぁ? 寝てたぁ? ん、だと思った。あぁっ! 悪かったよっ! こっちは仕事中、可愛い社員が労働中なんだからドローだろ! ちょっ、待て待て待て! 切るな! 切ったら延々リダイヤルすんぞ? あぁ? 電源落とすだぁ? ふざけんなコノクソガキが! そんな事したらヤヨちゃん行かすからな!」 あーあーあー社長も災難だ。 こんな夜中に迷惑電話が……ハッ! もしかして、人生の運を使い果たしたからこんな目に遭ってるんじゃ!? なんてくだらない事を考えているうちに、少し目の覚めた社長がまともな会話を始めたらしく、 「あぁ……やっぱりか。うん、分かった。助かったよ、ありがとう。あ、もしかしてユリちゃん起こしちゃったか? 悪かったって伝えて……あ、そう。歯ぎしりして爆睡中なんだ。カワイイな。うん、じゃ、またな」 タップしたスマホをワンピースのポケットに入れながら、弥生さんはこう言った。 「霊力(ちから)の出所が分かったよ。アイツ、その辺の野良幽霊、その中でも悪霊達を自分の中に取り込んで、霊力(ちから)に変換してるんだ。光る道の欠片の霊力(ちから)を利用してるんだろ。取り込みさえクリアすれば、あとは誠のソウルアーマーの応用だ。誠は薄切りにした悪霊を纏う。ジャッキーは塊のまま消費する、その違いだ」 「悪霊達……? 光る道の欠片で集まってきちゃうから? それを逆手に取ったって事……? でもそんな事して大丈夫なの……?」 ”悪霊”というワードにマジョリカさんが更に青ざめる。 「少数の取り込みならともかく、多数だったら大丈夫じゃないだろうな。 誠に聞いたら、自分の中に霊を取り込むための印、魂のパーテーション分けも含めて聞いてきたらしい。アイツは覚えが良い。それをすぐに実行したんだろうよ。一応、霊媒師歴五年以上のキャリアだ。あの術を使う資格は持っている。アイツの家さ、玄関回りとかやたら鉢植えがあっただろ。花をいくつも配置して植物結界を張ってたんだ。それがあれば家の中まで悪霊は入れない。たぶん、結界を解いたんだ。だから昼に電話しても出られる状態じゃなかったんだろうな。今だって出ない。エイミーちゃん、マジョリカ、今すぐアイツの家に行くぞ」
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