第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ 公園に張った生者避けの結界。 これは念の為、このまま残す事にした。 集めてしまった悪霊を滅するにあたり、なるべくジャッキーさんの家の中でコトを完結させたい。 だがもしも悪霊が家の外に逃げ出した場合、生者がいない場所に誘導する必要がある……その為に残すのだ。 元々人が来ない場所だしね。 解除はすべてが終わってからでも遅くないよ。 【まじょりか ヤヨイと て つなぐ】 おねんね中だったヤヨちゃんに起きてもらって、マジョリカさんの護衛につけた。 少し眠って元気になったのか、小さくぴょんぴょん跳ねているのが可愛らしい。 「マジョリカ、これから行くジャッキーの家の中は、おそらく悪霊達でいっぱいだ。さらに言えば、ジャッキーの中にも(・・・)いるかもしれない。絶対にヤヨちゃんの傍を離れるな。悪霊は綺麗な女が大好物だからな。特に女の髪は狙ってくる。本当はどこかで隠れててもらいたいけど……外に独りにさせるもの、同じくらい危険で心配だ。だったらアタシらと一緒の方がいい。大丈夫、ヤヨちゃんもいるし、エイミーちゃんもいる。もちろんアタシもだ。アンタを絶対に守るから」 先週一緒にシチューを食べた時の、妹キャラのような弥生さんとは正反対の、頼れる姐御といった強さが漲っている。 確かに弥生さんは強い、戦闘能力もあり霊力(ちから)もある。 だけど身体は一つしかないのだ。 これから行くジャッキーさんの家にどのくらいの悪霊達がいるのか分からないけど、弥生さんばかりに負担を掛けちゃ駄目だ。 僕も頑張らなくちゃ。 ヤヨちゃんとしっかり手を繋いだマジョリカさんは、かなり緊張した面持ちだ。 それでも、 『大倉……ありがとう。ウチ……みんなの足を引っ張らないようにヤヨイの傍離れないよ。……本当はすごく怖い。黄泉には善人しかいないから、悪霊なんて聞くと震えちゃう。……だけど行かなくちゃ、だってジャッキが心配だもの。ジャッキになにかあったら……ウチ……』 涙が零れそうになったマジョリカさんだったが、その前に目を擦り、気合で止めた。 「じゃあ、出発だ」 リーダーの声がかかった。 急遽組まれた僕達フォーマンセルは、揃ってジャッキーさんの家へと向かったのだった。
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