第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ ~~ドアの向こう側・弥生1~~ 悪霊ってさぁ。 なんで、どいつもコイツもパターンが似てるんだろうな? どっかで集まって意識合わせでもしてんのかな? 生者を襲う時はコレ! みたいなさ。 それとも悪霊達の中で流行りがあるのかな? どうして、こう……なぁ。 まただよ、これ、内臓? 「なぁって! オマエ……それともオマエラ(・・・・)か? なんで、いつもいつも赤黒くてヌメヌメしたフィールドに引っ張り込むんだよー!」 霊媒師になって10年。 一番最初に視た時はビビったけど、この内蔵ライクな空間は結構な確率で遭遇する。 部屋の中なら、床から壁から天井まで、ぜーんぶヌメヌメ。 胃がめちゃくちゃ荒れてる人以上の赤黒さでさ、内視鏡カメラの映像そのものって感じ。 赤黒いコレは触るとネチャーって糸引いて、霊刀で斬ると刃がベトベトになるんだよね。 そのたび浄化しないとだから無駄に霊力(ちから)使うし。 部屋全体を斬り刻んでたら時間もかかるし、霊刀じゃダメだ。 「なぁなぁ、ダメ元で聞くけど本体ドコに隠れてんの? そこ攻撃(やれ)ばアタシの手間が省けるんだけど、って、うわっ!!」 ひゃー! アタシが喋ってるってのに攻撃してきやがった。 前方二時の方向、そこから形状変化で赤黒い矢が飛んできた。 反対側に飛んで逃げたけど、着地の足元がブヨブヨして安定感がない。 コレ、何度も飛び避けてたら足首捻りそう。 つーか昔、捻ったコトがある。 あの時は、ジャッキーとツーマンセルだったんだよなぁ。 現場が終わってジャッキーがすごい心配してくれて、本当はたいしたコトなかったけど泣きマネして痛いって言ったら、オロオロしながら病院行こうって大騒ぎしたんだ。 あー幸せだったなー。 幸せ終わっちゃったなー。 七年の恋も終わっちゃったなー。 つか、死ぬ気で終わらせたのにジャッキーの野郎……なんでマジョリカと別れようとしてんだよ。 せっかく余計なアタシがいなくなったんだ。 うまくいってほしい。 マジョリカ……綺麗だったなぁ……てゆーか、アタシ、マジョリカと会うの初めてだよなぁ……? 会ってりゃ、あんな美人、しかも髪が宇宙な女なんて絶対忘れないよ。 初対面なはずなのに、なんか引っ掛かるんだよなぁ。 あの子の出す空気感っていうのかなぁ。 どうも昔から知ってるような気がしてならない。 まぁ、ジャッキーから話を聞いてたから、それでそう思うのかな。 『オンナァァァアアア……! さっきからボーっとしやがってぇぇぇ……! 舐めてんのかぁぁあああっ!』 耳にザラつく不快な声。 それで現実に引き戻された。 ああ、やっぱり今のアタシはヘタレもいいトコだ。 戦闘中にボーっとするとかあり得ない。 気合入れないと。 ヘタレなアタシを、庇い守ってくれるジャッキーはもういない。 独りでやってかなくちゃいけないんだ。 それにこのドアの向こうには、守るべきマジョリカがいる。
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