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◆
~~ドアの向こう側・弥生1~~
悪霊ってさぁ。
なんで、どいつもコイツもパターンが似てるんだろうな?
どっかで集まって意識合わせでもしてんのかな?
生者を襲う時はコレ! みたいなさ。
それとも悪霊達の中で流行りがあるのかな?
どうして、こう……なぁ。
まただよ、これ、内臓?
「なぁって! オマエ……それともオマエラか? なんで、いつもいつも赤黒くてヌメヌメしたフィールドに引っ張り込むんだよー!」
霊媒師になって10年。
一番最初に視た時はビビったけど、この内蔵ライクな空間は結構な確率で遭遇する。
部屋の中なら、床から壁から天井まで、ぜーんぶヌメヌメ。
胃がめちゃくちゃ荒れてる人以上の赤黒さでさ、内視鏡カメラの映像そのものって感じ。
赤黒いコレは触るとネチャーって糸引いて、霊刀で斬ると刃がベトベトになるんだよね。
そのたび浄化しないとだから無駄に霊力使うし。
部屋全体を斬り刻んでたら時間もかかるし、霊刀じゃダメだ。
「なぁなぁ、ダメ元で聞くけど本体ドコに隠れてんの? そこ攻撃ばアタシの手間が省けるんだけど、って、うわっ!!」
ひゃー!
アタシが喋ってるってのに攻撃してきやがった。
前方二時の方向、そこから形状変化で赤黒い矢が飛んできた。
反対側に飛んで逃げたけど、着地の足元がブヨブヨして安定感がない。
コレ、何度も飛び避けてたら足首捻りそう。
つーか昔、捻ったコトがある。
あの時は、ジャッキーとツーマンセルだったんだよなぁ。
現場が終わってジャッキーがすごい心配してくれて、本当はたいしたコトなかったけど泣きマネして痛いって言ったら、オロオロしながら病院行こうって大騒ぎしたんだ。
あー幸せだったなー。
幸せ終わっちゃったなー。
七年の恋も終わっちゃったなー。
つか、死ぬ気で終わらせたのにジャッキーの野郎……なんでマジョリカと別れようとしてんだよ。
せっかく余計なアタシがいなくなったんだ。
うまくいってほしい。
マジョリカ……綺麗だったなぁ……てゆーか、アタシ、マジョリカと会うの初めてだよなぁ……?
会ってりゃ、あんな美人、しかも髪が宇宙な女なんて絶対忘れないよ。
初対面なはずなのに、なんか引っ掛かるんだよなぁ。
あの子の出す空気感っていうのかなぁ。
どうも昔から知ってるような気がしてならない。
まぁ、ジャッキーから話を聞いてたから、それでそう思うのかな。
『オンナァァァアアア……! さっきからボーっとしやがってぇぇぇ……! 舐めてんのかぁぁあああっ!』
耳にザラつく不快な声。
それで現実に引き戻された。
ああ、やっぱり今のアタシはヘタレもいいトコだ。
戦闘中にボーっとするとかあり得ない。
気合入れないと。
ヘタレなアタシを、庇い守ってくれるジャッキーはもういない。
独りでやってかなくちゃいけないんだ。
それにこのドアの向こうには、守るべきマジョリカがいる。
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