第十六章 霊媒師 弥生の気持ち

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◆ ~~ドアのこちら側・マジョリカ1~~ ※微グロ、ブツブツ注意です。ごめんなさい。 怖い……怖いよ……向こうでなにが起きてるの……? 大倉弥生は、岡村は大丈夫かな……? 摺りガラスに映るシルエットが何度も変わる。 赤黒いモノでいっぱいになったかと思うと、ただの薄闇になる。 それを何度も繰り返してる。 向こう側には悪霊がいるんだよね……? 大倉弥生も岡村も出てこない…… 無事かな、怪我してないかな、ピンチじゃないかな……? ヤダよ、あの二人に光る道なんて伸ばしたくないよ。 大倉弥生は嫌いだけど……悔しいけど嫌いになりきれないんだ。 あの子……ウチの事、絶対に守るって言ってた。 ウチがいなくなれば、ジャッキと一緒にいられるのに。 守るって言ったあの目にウソはなかった……そういう子だから、ジャッキは好きになっちゃったのかな。 ウチと手を繋いでくれる小さな手。 急に握る力が強くなり、ヤヨイはジッと玄関の方を視詰めていた。 どうしたの? と目線を玄関に移動させると、 『ヤヨイ……アレ……!』 視れば幽霊(ひと)かどうかも解らない、男か女かも解らないナニカ(・・・)が、ズズズズと不気味な音を響かせて、玄関のドア、天井、壁から、生えるように家の中に入ってくる。 き、気持ち悪い……何なの……? 形は人に似てるけど……皮膚が……霊体(からだ)全体、巨峰の粒のような丸いモノがビッシリと付着して、視ただけで嫌悪感でいっぱいになる。 そんな化け物が次々とウチラに向かって迫ってくる。 玄関からここまで数メートルもない……ヤダ……ヤダヤダヤダ!! 来ないで、来ないで、来ないで!! ヤヨイと一緒に逃げよう、でも、足がすくんで動かない。 どうしよう、どうしよう……! 大倉弥生は、ジャッキは、いつもこんなのを相手にしてるの? 駄目だよ、危険だよ、ああ、どうしよう……! 【まもルよ、】 あ……ふわりと降ってきた文字。 ウチの目の前、静かに降りたヤヨイのコトバ。 大倉弥生とそっくりな、幼い顔がウチを視上げてる。 ちっちゃな女の子とは思えないしっかりとした眼で、ウチをジッと視詰めてる。 【ダイジョブ、はなレないで】 小さなヤヨイは繋いでいない左手をスッと上げると、天から【守】の文字を降らせ、それは床に着くとシャボンのように弾けたんだ。 ブンッと鈍い音がしたのと同時、ウチとヤヨイは一瞬で紫の光に包まれた。 イメージは大きな卵。 【ケッカイ ヤヨイとまじょりか まもる】 とうとう傍まで来てしまった全身ブツブツの悪霊達は、ヤヨイの卵の結界の外側をさすったり叩いたりしていて……紫色の結界は透明で向こう側が視えるから、囲むブツブツが至近距離で目に入り、ウチはもう吐きそうで怖くてたまらなかったんだ。 ヤヨイ……ダイジョブだよね? 結界、壊れないよね? 怖いよ……気持ち悪いよ……バラカス……白雪ちゃん……ウチ……もうみんなに会えないかも…… ジャッキはどこにいるの? ウチを助けて……ウチを……ウチと……岡村と……それから大倉弥生を。
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